▽山羊が一匹 ページ26
「今日から新しいお父さんになる人よ」
小さい頃、そう言われたときの記憶は今でも残っている
実際、父さんの顔を一度も見たことがない私には少し不思議な感覚だった
母さんの後ろに隠れ、ほがらかな笑顔を浮かべる男と、その隣の男の子を見ていた
「話は聞いとる、Aちゃんやろ？そんなに怖がらんでええよ、別におとんなんて呼ばんでもええし、おじちゃんでもなんでもええよ」
「困るわよそんな……ちゃんとお父さんって呼ぶのよ」
母さんはだめ押しするように私に言いつけた
「ほら、ナギト」
男が、男の子の背中を軽く押した
男の子は不機嫌そうな顔。
「……ナギト、十歳」
「A、今日からナギトくんがお兄ちゃんよ」
「……にいやん？なんでや？私、ずぅっと一人っ子やなかったん？」
「A、兄弟がほしいってゆうてたやん、そしたら神様がお願い叶えてくれはったんよ」
「ほんまに？じゃあ、にいやんなの？」
「そうよ」
まぁ正直。
よく、わからなかった
当時の私はまだ四歳、言葉さえもやっと話せるようになったくらいだったし。
「それと今日から東京に引っ越すさかい、ここともお別れや」
ここ、すなわち大阪
私はいわゆるヨソモノであって、決して東京出身の喰種ではないのだ
「えー…いやや、私、おうちここがええよ」
わからなかったから、駄々をこねた
「今よりも素敵なおうちになる、我慢しなさい」
母さんは、厳しかった
「まぁまぁ、僕にだって初めて会ったんや、心残りがあってもおかしくないやろ」
新しい父さんは、優しそうだった
「……」
血の繋がっていない兄貴は
「にいやん」
「はぁ？」
「よろしゅう、おねがいします」
「…ぷっ…はは、変なやつ」
とっても、明るい人だった
東京への電車のなか
「はーしれーはーしれーいつまーでもーぽっぽーぽっぽーきーしゃぽっぽー」
「ちゃうでA、どこまでもや」
「にいやんものしりや!!」
「……良かったわ、仲が良さそうで」
「あぁ、ほんまにな…」
私は確かに、幸せだった
＊＊＊＊＊＊
過去編に入ります、てか当然題名が山羊になるとか、どうしたの裕璃氷((
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東京グールサイコー - 後半、マジ泣きしました。 (2019年8月25日 15時) (
レス) id: 2e6efde964 (このIDを非表示/違反報告)
小林 - 最初はギャグ路線で面白いなと思っていたんですが、後半部はもう泣きそうでした。愛されるってこんなにも美しく儚いものなのかと分からせてくれました。ありがとうございます。これからも頑張ってください。 (2017年8月12日 18時) (レス) id: 12db5d571e (このIDを非表示/違反報告)
裕璃氷＠ＣＬ(プロフ) - 川神詠亜さん» レス遅れてすみません…!!ありがとうございます!!少しでも励みになれたらとても嬉しいです、これからも頑張ります!! (2016年4月15日 18時) (レス) id: aae3b068fb (このIDを非表示/違反報告)
裕璃氷＠ＣＬ(プロフ) - mocoさん» レス遅れてすみません……大丈夫ですよ!!ありがとうございました!!これからも頑張ります!! (2016年4月15日 18時) (レス) id: aae3b068fb (このIDを非表示/違反報告)
川神詠亜(プロフ) - あとがき泣きました。この作品に凄く励ましてもらいました。完結おめでとうございます。<m(__)m> (2016年3月21日 16時) (レス) id: cba0975e09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：裕璃氷
| 作成日時：2015年11月8日 21時
