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…まずは(人1)を知る所から始めてみるか。
幸い、人間観察は今や得意分野だ。
赤司に言われてやるようになってから
今となっては細かい癖まで分かるくらいには。
……髪型はセミロングのストレート。
顔は俺の主観で言えば美少女でも不細工でもない
どこにでもいる普通の顔で化粧は薄め。
制服も気崩さずにちゃんと着ている。
印象としては悪くないが悪く言えば特徴もない。
友達と話している時は後ろに腕を組む。
笑う時は控えめに握った片手を口元に当てて、
「!…っ」
目線に気付かれたのか、たまたまなのか
チラっとこちらを振り向いた彼女と目が合い思わず逸らす。
全力で逸らしたのも多分バレた。
……ああ、クソが。
自分が見られてる自覚なんて今までならしなくて良かったのに。
ラノベを開いて読むふりをしながら盗み見ると
彼女は俺の方を見たまま控えめに微笑んで
後ろに組んでいた手を軽く振ってみせた。
「……」
俺もラノベの影でちょこっとだけ振り返す。
振るというかほとんど手を開いただけだったし
多分めちゃくちゃ不服そうな顔をしていた自覚もあるが
それでも彼女はとても嬉しそうな表情をした。
「…そういう顔もするのか」
同じクラスの(人1)A。
…どちらかと言えば嫌いじゃない寄りの女子。
そのくらいの認識にはなった。
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昼休み。購買で適当に買ってから屋上に向かうと
そこには既に弁当を食う(人1)の姿があった。
「来ると思った。黛くん、屋上好きだよね」
「……」
別に約束とかしてた訳じゃない。
待ち伏せしてやがったなこの野郎。
……とは思ったけれど一応、隣に腰かけてパンの袋を開く。
弁当をちまちま食っている(人1)をチラリと見てから「友達とかと食べなくていいのか」問いかけると
やはり控えめな笑顔で「黛くんと食べたい」なんて抜かす。
俺はため息を着くと「あっそ……」と言ってパンに齧り付いた。
「…そうだ、黛くん」
「何だよ」
「連絡先教えてほしいな……なんて」
「は?ヤダ」
反射的に口から出てきてしまった。
いや、だって学校外でまで連絡取らなきゃならねーとか普通にめんどくさい。
(人1)は「で、でも、暫くはお互いお世話になるだろうし知っといて悪い事も無いと思うし」と必死になって食い下がってきた。
「……俺あんま携帯見ねーけど」
と言うと「それでもいいから!」と食いついてくるので
俺は諦めて仕方なくポケットからスマホを出した。
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作者名:由麻 | 作成日時:2024年3月26日 0時