『元』 地味女の逆襲

逆襲34 プライベートアイは欺けない ページ35

未だに氷室の笑顔は崩れる兆候を微塵も見せない。

そろそろこいつの作り笑いに嫌気が刺す。

何より、先ほどからずっと変わらない表情に悪寒すら感じた。



「1つ質問しますけど……

氷室さんは私のどこが好きなんですか?」



私が尋ねると、氷室は一瞬驚いた顔になる。けど、またいつもの笑顔に戻して言葉を並べた。



「それは、黄瀬から聞いた通り、君の女性らしい、知的な振る舞いにーーーー」

「本当にそうですか?」



私の質問に、思わず言葉を詰まらせる氷室。

本人は私の中身に惹かれたって言いたいんだろうけど、一度会ったくらいでわかるわけないじゃない。

本当、聞いて呆れるわ。



「あなたは私の振る舞いに惹かれたと言いましたね。けど、それはあくまで人から聞いた話。

しかも私と氷室さんは一度しか会ってない。
人の中身なんてそう簡単にわかるものではないわ。
少なくとも、一度会っただけじゃ真実は見えない。」


「それと…」と付け加え、私はとどめの一言を投げつけた。



「作り笑顔やめたほうがいいですよ。
私は心から笑わない人と一緒にいたくありませんし。



あなたはその作り笑顔で、何人もの女性を落としてきたんでしょうけど……



残念ながら私の目は偽りきれなかった……




そう、12年越しの傷で暗闇に染まった私のプライベートアイはね‼‼」






ちょっと手がかり与え過ぎた?






闇の男爵…ナイトバロンのような微笑みを頭に描き、ニヤッと笑う。




いいね。その駆け引きに負けて絶望した顔。
傑作よ。



あー、もうおかしくて死にそう。




「So long…」





今にも込み上げそうな笑いを堪えながら私はその場を後にした。




あれくらいで動揺されては困る。

私はもっとつらい言葉をあなたに言われたんだから。

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