先端恐怖症の衣更真緒の話 (ページ8)

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過去の話 side，Rー② ページ8

ま～くんは身動きひとつ取れなくなっちゃって。

でも俺はそれに気づかず、一心不乱にあの子の血を吸った。

新鮮で、美味しかった。

今でもはっきり覚えてる。

でも、小学生のま～くんにとって、それはもう恐怖でしかなかった。

気がついたときには、ま～くんの顔は真っ青で、涙で顔がびしょびしょ。

あんなに泣いてるのは、初めて見た。

後悔しかなかったなぁ。

〝ごめんね、ま～くん〟って言いたかったけど、声に出せなかった。

ま～くんは泣きながら、俺の家を出て行った。

俺はその日から、もう絶対ま～くんをあんな間に合わせないよう、決意した。

でもね、次の日、ま～くんはいつも通り、朝、俺の家に来た。

不思議で仕方なかった。

昨日あんなに怖い思いしたはずなのに、ま～くんは笑顔で、『りっちゃん、おはよう』って言った。

何でだと思う？

兄者がね、あの一部始終の記憶を、ま～くんの脳内から消したんだよ。

まあ、何で小5の男の子がそんなことできるのかって思うよね。

兄者はいつも、「なぁに、子供のちょっとした好奇心じゃよ」って、軽く流す。

だから真相は分からないんだけど、とりあえず、今もまだま～くんはその記憶を失ったままなんだ。