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キャンディ ページ11

八「目、閉じとけ」








いつもだったら「彼女いるんでしょ」と2人の距離を正常に戻す魔法の言葉を言えるけど、



見慣れない執事姿の銀八先生で今日に限っては抵抗力も虚しく消え去る



言われた通り目を閉じて、言われてないけど口もきゅっと閉じる





もしここで先生とキスなんぞをしてしまえばズブズブに溺れて秘密の関係が構築されるのは必至



それがどれ程危険なことかなんて高校生の私にはまだ分からないふりをして



目の前にある貪欲な何かに突き動かされるままに行動する








八「A…」










教師と生徒から、浮気相手に発展するまであと少し













「んぐぅッ?!」













奇妙な声が国語準備室に響き渡る



私の唇に触れたのは銀八先生ではなく、甘い甘い苺のキャンディ



先生はキャンディを私の口内に押し込んだ後に離れていき、背を向けて校内禁煙なのに煙草に火を点ける



銀八先生が煙草を吸う姿は子どもの私にも感じるくらい色っぽくて刺激が強すぎる






独特な煙草の香りが鼻腔をツンと突けば、口に含んだ苺のキャンディの甘い香りがそれを浄化する



妙な勘違いをするな、と警告されてるみたいに



そんなことは分かってるけど勘違いしちゃうのは、背を向けてる銀八先生の耳が赤くなってるから



本当はするつもりだったんじゃ、なんて強引な思考を引っ張り出す



火照った脳を冷やすためにコロンとキャンディを舌で転がせば、糖分が味覚を刺激して冷静になれる気がした








八「明日からそれ、禁止な」



「なんでよ!」








未だ背を向け煙草を吸いながら突然、変なことを言い始めた



それというのは勿論、桃の香りのリップのことで、



これぞ理不尽というやつなのかもしれない



先生からの謎の命令に従いたくもなく、猛反発をきーきー猿の如く並べる



そんな私に呆れたのか、煙草を簡易灰皿に捨て私の前に膝を立てて手を取る










八「お嬢様に余計な虫が付くといけませんので」



「…勘違い、しちゃうよ?」



八「お好きなように」











それだけ言うと先生は来ていた執事の衣装を脱ぎ、いつものダルダルの白衣姿に戻った

お泊り→←桃の香



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作者名:るう | 作成日時:2022年9月3日 22時

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