色づく世界、君の声、歌。【あんスタ】

天祥院 Emperor And Princess ページ3

貴方side





人の上に立つ人って、どんな気持ちなんだろう。




こんなことを考えて、英智に聞いたことがある。









「人の上に立つ気持ち？」



「ええ。英智なら、わかるでしょう？」




「うーん…
残念だけど、わからないな。」




これが普通だから、と微笑む英智。




きっと、彼を知らない人間(いる筈が無いけれど)が聞いたら、
酷く嫌味で、傲慢な人間がいるものだ、と思うだろう。




でも、産まれたときから英智の許嫁として生きてきた私には、わかるのだ。



彼が自分の立場を、

人の上に立つ人だということを、

たまたま嫡男として生まれ落ちたことを、

自分が優秀なことを、

その力を生かせないほど弱い自分のことを、



どんなに、どんなに、憂いたかを。




「ふふ、A、今僕のことを嫌味で傲慢な人間だと思っただろう？」



「いいえ、半分間違ってるわ。
英智を知らない人が聞いたら、が最初に付くの。」




「おや、A以外の人間にはそう見えるのかな？」




「…わからないわ。

だって、」





英智の許嫁としての人生しか歩んだことがないから。





そう伝えると、英智は微笑んだ。


きっと、学園の誰もが、
もしかしたら私以外見たことがないかも知れない、
優しくて、儚くて、驚く程人間らしい笑顔。





「じゃあ、その後に“皇帝”の憂いを想って
涙に沈みそうになったのは、当たっている？」




「…そうね。“皇帝”は、寂しそうだわ。」




「ふふ…
では、それを知っている姫君は、何を思ったんだい？」





「決まっているわ。」








皇帝の許嫁以外の人生を歩まない、と決意を新たにしたのよ。







「…どちらがどちらを守るべきなのか、わからなくなってしまうね。」









───私は、皇帝の瞳が涙に沈むのを見た。

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