色づく世界、君の声、歌。【あんスタ】

羽風 傷ついた君と私と誰か。 ページ4

貴方side






「ん…」




離される唇。


形式的なそれに、もう愛は残っていない。







「あー… Aちゃん、仕事は明日何時から？」





「…確か、13時に入りだった気がする。」






「あ、ほんと、」







ほら、君のその顔。




思わず謝りたくなるような、悲しそうな、目。


予定、があるんでしょ？



私以外の、誰かと愛を。








「用事があった？私が引き留めちゃってる？ごめんね。」





ごめんね、あなたが好きで。




分かっていても離れない私は、とんだ道化だ。







「ううん、いいんだよー。
俺がAちゃんといたかったの。」




「そう…？ ごめんなさいね、薫。」









ずっとあなたが好きで。

自分でも怖くなるくらいに好きなの。








ね、気づいて。

このままじゃ、二人とも傷つくから。





今すぐこの手を引いて、


耳元で愛を呟いて、


すぐにあなたで満たしてよ。









なんて、言えないけれど。






「じゃあ、泊まってく？」


「そうしよっかなー。あれ、俺の洋服って置いてある？」




「私の部屋にあるわ。入っていいわよ。」



「じゃ、先にお風呂頂こうかなー。」






当たり障りのない、今までと同じような会話をして、
自然な流れで部屋を出ていく薫。







右手に握られたスマートフォン。



最近、非通知のメッセージが来ても
見てみぬふりをして笑う私の苦しみを、
あなたは知らないのね。









料理しようと手にとった包丁を置き、その場に座り込む。



あなたがまた部屋に入ったら、また笑顔を作ってしまうから。




あなたが今いること。

それだけで満たされてしまうから。






今のうちに、別れの言葉でも考えておこうかしら。


もう誰も、傷つかないように。



今のままでは、誰も報われないから。


私も、薫も、誰か他の子も。







未練も、なにもないように終わりたい、と心から思う。




もう、あなたを二度と思い出さないように。








でも。









「薫…ッ」









あなたへの大きすぎる愛が、
それを許してくれないの。






────

鳴上 狼お姉ちゃんと子羊→←天祥院 Emperor And Princess

ラッキーアイテム

革ベルト

ラッキーカラー

あずきいろ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す