【あんスタ】兄嫌いと兄者嫌い【男主】

Episode１０＋痛むのは＋ ページ11

朝礼が終わり、アドニスという青年と共に、Aは、椚先生の元へと向かった。応接間へと通された二人は、俗にいう事情聴取というものを受けた

警備員の菊地さんと、椚先生、そして副校長という何とも緊張する場で、Aはこの場でにはとてもそぐわないことを考えていた



「それで、二人とも怪我をさせられた、とか何か揉めた等ということはありませんね？」

主に後半の内容にかけて、"ないよな" という圧を副校長に掛けられながらも、Aは痛む腰に手を当てた
正直、朝あの時点ではちょっとした痛みで済んでいたのだ。だから家に帰って湿布でも貼ればいいだろう、そんな風に考えていた
けれども、時間が経つにつれ、痛みが増していき、正直、話を聞くどころじゃなくなってしまったのだ



「瀬名君、どうかしましたか」

いち早く彼の異変に気が付いたのはもちろん、椚先生で
どうしましたかと言いつつも、明らかに何かを見抜いている視線をAへ向けた


『いやっ、特に何も...』

できるだけ紡ぎ出す言葉を少なくし、痛みをこらえた
大ごとになったらそれはそれで、もっと詳しい話をしなければならない、そう考えたAは必要以上に口を開かなかった


「……そういえば、Aがあの女子に突き飛ばされていた」

ふと思い出したかのように言い出したアドニスに、Aは内心舌打ちをした
余計なことを、と思う間もなく、当然のごとく副校長による圧を掛けられながらの尋問が始まった


二人が解放されたのは、あれから１時間後だった
そして、アドニスは教室へ、Aは保健室へと向かわせられた

一人にしては向かわない可能性も考慮したのか、着いてきた椚先生
彼がAに何かを問おうと口を開き、迷い、そして口を閉じた

そうこうしている間に、保健室へとたどり着き、
２年Ｂ組担任の佐賀美 陣先生が扉から顔を出した

先に保健室内へと促されたAは大人しく指示に従い、ベッドへ腰かけた
それを見届けながら椚は、佐賀美に何やら話をし、やがて佐賀美だけがAの元へとやってきた



サーっとカーテンを閉め、Aの前にしゃがみ込んだ佐賀美は、項を掻きむしりながら、あーと声を上げた


「その、なんだ。椚先生から聞いたよ。不法侵入の女子と何やらあったみたいだな
まあ、瀬名が考えていることは俺はわかんねぇけど、……溜めこみすぎんなよ」


言いたいことだけいって、湿布を取ってくる、とAの傍を離れた佐賀美にありがとうと小声で伝えた

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