1章ある街にて 8話 ページ9
喉が痛い。
心臓がバクバクとなっている。
今も尚、揺れは収まらず、黒い物体がなにかに向かって攻撃をしている。
その場所に近づくにつれ、その黒い物体が、予想よりもはるかに大きいものだったことに気がつく。
丸い球かと思ったその体は、無数の大砲がつけられ、中心には人の顔のようなものがあった。
月光の光を浴びたその姿は、想像以上にグロテスクな見た目をしている。
…ここまで随分と走ってきてしまったが、黒い物体は、ある一点に向かって攻撃を続けており、私には一向に気が付かない。
狙っているのはお墓のある場所。
そこに、一体何があるんだ。
そう思った瞬間、ヒュォッ…と、風を切った音が聞こえた。
慌てて顔を上げると、それは月光に照らし出された、一人の人間だった。
…目があった気がした。
本当に一瞬で、目があったなんて言えるほどでもないかもしれないけれど、私はその人の顔をしっかりと見た。
そして、ある名前が頭に浮かぶ。
“アレン・ウォーカー”
ドクンッドクンッと、心臓が脈打つのを感じた。
私は…彼を知っている?
「
そう、少年が叫んだかと思うと、全ての黒い物体の腹が十字架に裂けた。
そこから光を発生させ、爆発し、突風を巻き起こす。
それは全てを飲み込んで、大きな火柱が立ち上った。
あまりの衝撃に私はバランスを崩し、その場に倒れ込んだ。
しかし、それっきり、全ての黒い物体はいなくなり、あたりが静まり返った。
55人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:樹乃 | 作成日時:2016年10月3日 17時