look for you 【D.Gray－man】 (ページ6)

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1章ある街にて 5話ページ6

私は、ごく普通の女子高校生だった。

そう、ここへ来る前までは。

何故この場所にいるのか、いつからこの世界に居たのか、思い出そうとすると、目の前にモヤがかかってわからなくなる。

…いつも通り、学校へ登校したことは覚えてる。

そして授業を受けて、帰宅して…

…家にたどり着いたのか？

学校から出た後の記憶が全く思い出せない。

って事は、その間に、何らかのことがあったって訳だけど…

まさか私がトリップするなんて。

しかも見知らぬこの場所に。

はぁ…

何度目かわからないため息をつく。

｢ほらほら、ため息つくと幸せが逃げるわよ｣

そう言って入ってきたのはアリイさん。

手には小さなクッキーが入ったお皿ととお茶のポットが乗っている。

｢リラックス効果のあるハーブティーを入れてみたの。
夕食まで時間があるし、ここに置くから飲んでね。｣

そう言って、側にあったテーブルにそれを置いた。

｢ありがとうございます…｣

もう夕食の時間か…

お昼を食べ終わってからというものの、行く宛も何も無いせいで、結局今日もここに泊まることになった。

私を助けてくれたおかげに、また今日も面倒を見ていただくなんていけないだろうと一応断りはしたが、息子はとっくに成人して2人暮らしだし、私のことが心配だから泊まっていきなさいと言われ、そうすることになった。

あれからずっと考えていたけれど、考えれば考えるだけ謎が深まって、ますます状況が掴めなくなる。

こんがらがった紐が頭の中でますますぐちゃぐちゃになって、固くて取れない結び目が出来ているかのように、1番重要な部分が思い出せない。

キッチンからカタカタ…トントンと、物音が聞こえる。

きっとアリイさんが夕食を作っているんだろう。

昼食は本当に美味しかった。

夕食も、またあの美味しい料理が食べれるのだと思うと、自然に顔が緩んでしまう。

…ハーブティーのいい香りが、鼻をかすめた。

テーブルの上にあるポットに手を伸ばす。

先程アリイさんが置いていってくれたハーブティーを1口、口に含んだ。

ふわりと口の中で広がる爽やかな香りに、スッキリとする後味。

…とても美味しい。

いつもはハーブティーなんて飲まないけれど、こんなに美味しいのなら、毎日でも飲みたくなる。

あたりに広がるハーブティーの香りに、私の心も少しだけ落ち着いた気がした。