3章黒の教団 9話 ページ33
その後もリナリーさんが色々な所を案内してくれた。
「このフロアは修練場。
三階層に渡ってあるの。
…ここが談話室。
他にも療養所や書室、各自の部屋もあるからあとで案内するね」
「部屋が与えられるんですか!?」
アレンが驚いたように尋ねる。
確かに、教団内に個人の部屋があるのはちょっと特殊かもしれない。
「エクソシストは皆ここから任務に向かうの。
だから本部のこたを『ホーム』って呼ぶ人もいるわ。
出て言ったきり、わざと帰ってこない人もいるけど」
アレンが苦い顔をする。
…あぁ、帰ってこない人って、アレンの師匠さんか。
だけど…
…ホームか。
…なんだか、この世界へ来る前のことを思い出した。
そう言えば、毎日学校へ行くために早起きするのが辛くて、毎朝お母さんからたたき起こされてたっけ。
お父さんとはあまり話すことも少なかったけれど、“行ってきます”くらいは言っていたかもしれない。
なんだかそんな当たり前だった日常が、とても遠い過去のように思える。
…懐かしいな。
ここへ来て家族と会えなくなるだけで、こんなに心細くなるんだという事を知った。
…私にも、この教団がホームと呼べるような場所にこれからなるのだろうか。
…アレンを見ると、なんだか嬉しそうな表情を浮かべていた。
アレンにとってのホーム。
アレンの過去。
私は何も知らないけれど、きっとアレンにも、私の両親のように大切な、考えると自然と笑顔が出るような存在があったに違いない。
そんな事を考えると自然と胸のあたりが温かくなったような気がした。
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作者名:樹乃 | 作成日時:2016年10月3日 17時