2章白髪の彼と私 9話 ページ22
｢ごめんなさい、待った？｣
待ち合わせの場所に行くと、既にアレンは到着していたようで、待たせてしまって申し訳ないと謝る。
｢いえ、僕も今来たところです｣
そう言って、笑顔を見せるアレン。
流石、嫌な顔ひとつ見せない所が紳士だと思う。
無事退院したアレンは、包帯でぐるぐる巻だった右手もすっかり治っていた。
｢でも、本当に大丈夫なんですか？
僕についてきて｣
アレンはエクソシスト。
その事実は、何度かアレンのお見舞いへ行った時に聞いたことだった。
最初は半信半疑だったけれど、とても真面目な顔のアレンと、私が実際に見たあの戦いのことを思い出すとそれが本当なんだと察する。
まさか、本当にそんな人がいるなんて。
黒い変な物体と戦っている時点で一般人で無いことは一目瞭然だったが、実際にこんなファンタジー的な職業の人と会えるとは思ってもいなかった。
最初は、そんなアレンがカッコイイだなんて言っていたけれどAKUMAの存在を聞いた時はどれほどエクソシストが辛いものなのかを感じた。
��AKUMA��
それは千年伯爵から造られた、殺戮兵器。
そして、昔は人だったもの。
AKUMAは呼び戻された人の魂。
あのアレンが戦っていた黒い物体がAKUMA。
…あれのどこが、人間と言えるだろうか。
そんな話を聞いた後には流石に私も気持ちが悪くなったけれど、AKUMAを救済するために戦うアレンを見て、私も立ち止まってはいけないんだと感じた。
だからアレンが、退院したら黒の教団へ行くことを聞いて、私もついていくことにした。
そう決めたのは、直感でそう感じたのもあるけれど、この世界にいる私が一体何者なのか、どうして私はここにいるのか、それを知ることの出来るきっかけができればいいと思ったからだった。
そしてアリイさんとトルトさんともお別れをした。
前に進むために。
｢きっと後悔はしないと思う。
だからアレンについて行くよ。
アレンみたいな強さも、なにも持ち合わせていないけど、自分で決めた道だから｣
アレンをしっかりと見つめる。
｢…なんか、初めて会った時とは雰囲気変わりましたね。
なんだか、前はもっと弱々しかったのに…｣
｢え、ボクそんなに弱そうだった？｣
｢いや、そういう事じゃなくて…なんだか、今のAは吹っ切れた顔をしてますよ｣
そう言って私の頬を優しくつねる。
｢それじゃあ、早速行きましょうか｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：樹乃 | 作成日時：2016年10月3日 17時
