2章白髪の彼と私 8話 ページ21
2人と初めて昼食を食べたあの日。
ずっと悩んで、ずっと怯えてた。
だけどそんな私を支えていてくれたのは、紛れもないこのふたりだ。
「なんか…私の本当の両親はアリイさんとトルトさんなんじゃないかって思っちゃうくらいで。
2人には本当に感謝してるんだ」
あれ…私、泣いてる。
1週間というとても短い期間だけれど、私にとって2人は、別れるのが辛いほど大切な存在になっていたのか…
「私がこうやって笑えているのも、この選択が出来ているのも、全部2人のおかげだよ。
…私は、前に進む。
自分自身のことを知るために、私は立ち止まらないことに決めたんだ。
…本当に、今までありがとうございました!!」
これで、本当に最後の別れ。
私が頭を下げると2人は私をきつく抱きしめた。
「A、自分が決めた道を貫きなさい。
…僕たちも、ずっと君を応援するよ。」
「もし、どうしようもなく辛いことがあったら思い出して。
貴女は1人じゃないわ。
私は…ずっと貴女のそばにいる。」
私は歯をぐっとくいしばった。
自分では抑えきれない、熱い涙が頬から流れ落ちる。
そして、2人から離れる。
抱きしめられて温かかった身体がすっと軽くなって、これからは1人なんだと心細くなる。
いや、そんなふうになる必要はない。
私は1人じゃない。
どんな場所にいたって、私と2人は繋がってる。
…私は2人に背を向け、一歩踏み出す。
ここからが、私のスタート。
そして少し歩いた後、もう一度だけ、後ろを振り向いて大声で叫んだ。
「行ってきます!!」
…先程までいた家が豆粒ほど小さく見えた。
きっと、この声は聞こえないだろう。
だけど、この思いは、絶対に届いたはずだ。
私は、前を向く。
私は…この先にある未来へ歩いていく。
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作者名:樹乃 | 作成日時:2016年10月3日 17時