1章ある街にて 10話 ページ11
あたりには、自分の足音と、すすり泣く声が微かに聴こえた。
そこには少年が血を流しながら倒れていて、ヘルメットのような帽子をかぶった男の子が彼に顔を埋めて泣いていた。
私は足を止めた。
「レオ…ごめん……」
そう、男の子はぽつりと呟く。
“レオ”…これもまた聞いたことのある名前。
一体どこでだろう。
そして、男の子はしばらくして泣き止んだかと思うとガバッと立ち上がり、「医者呼んでくる!!」と言って走り去っていった。
その時、側にいた私には気が付かなかったようだった。
ゴシゴシと涙を拭って走り去る姿に、あの子は強い子なんだと感じる。
力とか、そういうんじゃなくて、きっと心が強い。
まだあんなに子供なのに…
なんて、大人にもなれていない私が言うのもどうかと思うが。
泣くほど辛いことがあっても、すぐに立ち上がり前へ進む。
まるで、幼い頃の無垢だった私を見ているようで、クスッと自虐的に笑った。
私は、倒れている彼へ近づく。
腹部からの出血で血が足りないのか、気を失っているようだった。
…間近で見ると、思っていた以上に幼いことに気がつく。
白髪のせいか、実際よりも大人びて見えるようだった。
そして、もう2つ、気づいたことがあった。
左目の傷と左腕。
髪の毛がかかっていてよく見えないが、目の上には逆さの星が描かれていてた。
あきらかに普通の傷では無いことがわかる。
…彼も、何かを背負っているのだろうか。
腕もまた、先程までいた黒い物体を倒す時に見えた、大きな左腕のようなものではなく、あったのは普通とは違う左手だった。
赤黒くて、真ん中に何か石のようなものが埋め込まれている。
これも、普通じゃない。
普通じゃないからどうこうとか、言うわけでもなくて、ただ純粋に彼に興味があった。
今は眠っている彼の頬に優しく触れる。
彼とは初対面な筈なのに、何故か、前にどこかで会った気がする。
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作者名:樹乃 | 作成日時:2016年10月3日 17時