1章ある街にて 1話 ページ1
隙間から漏れる光は直進して、転々と、私の顔に明るい斑点を映す。
何処からか、鳥の鳴き声が聞こえ。
何処からか、人の気配がして。
何処からか、ゆっくりと時間が流れ出す感覚。
脳が私に朝だと告げる。
ぬくぬくと温まった布団が愛おしくて離れたくはないけれど、朝は起きなきゃいけないという小さい頃に教えこまれた使命感で、私は起きる。
ぐぅ…っと背伸びをすると、息が詰まったが目の前にかかっていたモヤは晴れて体が幾らか軽くなった。
隙間から光を漏らすカーテンをサッと開けて、光を全身に浴びる。
眩しくて目が眩む。
反射的に目を瞑ったが、そこでとてつもない違和感に気づいた。
…ここはどこだ?
一体、ここはどこなんだ。
私の家はいくら天気のいい日だって、こんなに日光は入ってこない。
人というのは面白いもので、1つの違和感に気づくと、次から次へと他の違和感も見つけてしまうものだ。
間違い探しなんかでもそう。
見つからない時はとことん見つからないしイライラするが見つかる時はどんどん見つかる。
今で言う、日光の違いだってそうだ。
それにそもそもこんな場所にカーテンすら無かったはずだ。
そういえば、このベッドだっていつもより幾らか固めだ。
この布団は白だが、家のは緑のチェック柄だし。
着てる服だって…今着ている、こんなカッコイイスキニーパンツは持っていない。
今、私が吸っているこの空気さえ、いつもより澄んでいる気持ちのいい感じがする。
私の脳が超高速で回転し始めるのと同時に、目も段々と慣れていき、ぼやけていた視界が、今、ハッキリと映った。
っ…!
私は息を飲んだ。
何故かって?
そりゃあ…ここが見ず知らずの場所で、窓から見える景色は明らかに日本ではなくて、自動車やビルはない、まるで十九世紀のヨーロッパのような街並みが、広がっていたからだ。
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作者名:樹乃 | 作成日時:2016年10月3日 17時