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*
「……と、いうわけで、今日は我々移動できそうにありません」
「…………」
「ちょっと、何で黙るんですか」
どうしてですか!? と騒ぐと、まあしょうがねえなと姿勢を直しながら岩泉さんが言った。
「少しくらい休憩でもいいだろ」
「休憩……じゃあ寝よう……」
「研磨は寝すぎ!」
目も開けていられない研磨さんのことを、隣の日向さんがガクガク揺する。同時に杖も揺れたので、ヒナガラスが驚いたのか飛び立った。
青根さんは無言だけど、私の足のことを心配してくれているようだ。ありがとうございます、すみませんの意を込めて小さく会釈すると頷かれた。
すると、隣で影山さんがボソリ。
「……Aは後で追いかけてくればいいんじゃねえか」
「影山さん!? 私を置いていくと!?」
「そういうわけじゃねえよ」
「いやそうでしょ私だけ置いて自分一人進むんでしょう!?」
「そこまで言ってねえよ」
「そうですか!!」
大体日向さんに会うまであなた私と二人だったのに。もっと前もそうだったのに。やっぱりアレですか、舞さんとこで足踏んづけたのを根に持ってるんですか。
「でもアレはあまりに影山さんが注意してないから……」
「何言ってんだ」
「とにかく!」
日向さんが人一倍大きな声で会話を遮った。日向さんのパワーはこういうことを言うのだろう。
「今日は基本的にここにいるってことだけど、ここに戻ってくるなら少し進んでもいいよな!?」
「あんまり遠くに行きすぎるなよ」
「じゃあそういうことで! そうと決まったら食いモン探さねーとな、おし研磨行くぞ!」
「やだ……」
拒否する研磨さんをずるずると引きずって、あっという間に消えてしまった日向さん。まあ、研磨さんいるから迷子にはならないか……。
しれっとさっきお母さんみたいな声の掛け方をした岩泉さんは、「じゃあ青根、行くか」と声をかけて二人で反対方向に消えた。どうやら気を利かせてくれたらしいけど、
「……じゃあ、俺はこっちに――」
「いやいやいや待ってください」
立ち上がった影山さんの腕を掴む。あ? と睨まれた私は、ゆっくり首を振りながら言った。
「影山さん……一人で行って戻ってこれますか」
「…………」
「森の中に目印なんてないんですよ」
「…………」
すとんと再び座った影山さんは、少し後にぽつりと言った。
「……火、焚くか」
*
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年8月1日 18時