第5章 招かれざる襲来者 01 ページ40
*
あの人は、私に訊いてきた。
"お前が欲しいものは何?"
私の欲しいものが、何なのか。
だから――だから、答えたのだ。
『私が欲しいものは――』
*
「……で、A、歩けるのか」
「そうですね……無謀かと」
「おい」
呆れた影山さんの声に、えへへとおどけて返す朝。
起きているのは私と影山さんだけだった。まあ、研磨さんも起きている、でいいんだろうけど……座りながら眠っているみたいな状態だから、ほとんど寝てると言っていい。
一晩寝て、体調は良くなったけれど。一度痛めた足はそうそう治らない。
見た目はあまり変わりませんけどね、と伸ばした足を眺めながら呟く。
「しばらくはここで立ち往生ですかね。……あ、影山さんが担いでくれたら問題はな」
「重い。パス」
「……もうちょっと気ィ使ってくれていいんですけどね」
まあしょうがない。当たり前だ。そもそもそこまで急ぐ道筋でもないし、休憩する時間だと思えばいいのかな。
ヒナガラスだけは元気に研磨さんの頭上を飛び回っている。……何だろう、何か忘れてる気がするんだけどなぁ。気のせいか。
それにしても、と隣に座る影山さんの顔を横目で見た。もう数十分すれば「腹が減った」と言いそうな彼。全員が起きてくる前に支度ができればいいけど、生憎動けないから何もできない。
最初は私と彼の二人で――そして、それぞれ一人ずつだった彼らが、今こうして一緒にいること。
それすらも何かの因果で共鳴で、重なった道があったのだろうか。
わからない。……わからないけれど、
「……影山さん」
「何だよ」
「いえ……何でもないです」
今日はちょっと曇っている空を見上げる。
ねえ、そこにいるんでしょう。
もしいなくても、すぐに見ることはできるでしょう?
なら――答えてくださいよ。
「……皆、起きなさそうですねぇ」
「ん……ああ」
「ちょっと、だからって影山さんも二度寝していいってわけじゃないですよ」
まあ向かいの研磨さんはうつらうつらを通り越してすぴーと寝ているけど。そういえば夜中、私が火を消して寝ようとした時にごそごそと起き出していた。
声をかけようかとも思ったけど、何やらブツブツ唱え始めたので邪魔しちゃ悪いかなと思ったのだ。多分何かしらの白魔術なのだろうから。
眠そうな影山さんの肩を叩きながら、再び言葉を反芻させる。
わかってるんですよね? だったら一体、
これは、何の真似ですか。
*
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年8月1日 18時