【FHQ】荒野往く旅路【影山飛雄】 (ページ39)

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その夜、私は燃える火をぼーっと見つめていた。

周りではみんなが寝静まっている。交代で火の番をする役目、今日は私の番だった。

足を心配してか青根さんが交代してくれようとしたけど、寝る直前にまたバンダナを濡らさないといけないから同じことだと断った。

それに、夕食の準備は私が動けない代わりに手分けして手伝ってくれたのだから、これでギブアンドテイクだ。

「…………A」

ふと、名前を呼ばれた。

顔をあげると、岩泉さんが起きてきていた。寝るときばかりは流石に軽装だ。甲冑の下の衣服だろう。

「岩泉さん。どうかしましたか」

「いや……ちょっと、話したくてな」

「はあ……」

岩泉さんは、火を挟んで私の向かいに座った。パチパチと音をたてる薪、熱い光が彼の顔を照らす。

「追放された……って聞いた」

「ええ」

やっぱりそのことだった。だって、他に思い当たる話題もない。

彼はしばらく言い出し辛そうにしていたが、やがて顔を上げた。

「答えたくなかったら、無理に答えなくていい」

「平気ですよ」

「そうか。…………やっぱり、あいつらなのか」

無言でゆっくり頷くと、「そうか」声が聞こえる。

私のすぐ後ろで、影山さんが寝ている。寝返りを打ったのか背中を向けているけれど。

どう――どう思ったのか、とは聞いたことがない。ただ。何も思わなかったなんて、そんなはずもないのだが。

「岩泉さんが飛び出していって」

火を見つめながら、私は言った。

「大王様、そればっかりでてんやわんやでしたから。だから……全然、気づかなかったんだと思います」

「あいつも大概だからな。……そうか、俺がこうなったから」

「岩泉さんのせいじゃないです。タイミングが、きっと良すぎたんです。だから、もしどうなっていても避けられなかったはずで」

足はもう、痛くなかった。

その代わりにか、胸のあたりがチクリと痛む。声に出して話すことが、こんなに苦しいなんて思わなかった。でも、一旦流れてしまったものは元には戻せない。

そして、私に今、それを堰き止める力はない。

「……あんまり、気にしないでくださいね」

最後にひとつ、無理なお願いを言った。

「過ぎたことですから。もう……もう、終わったことなんです」

「……わかってる」

悪かった、と呟いて、岩泉さんは立ち上がった。少し離れた寝床へ、その足を向ける。

早く寝ろよ――かけられたその一言が、どうにも重くて、あたたかかった。

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