「」I miss you…【MS】 (ページ24)

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部屋の合い鍵を渡した翌日から彼は荷物を少しずつ持ってきて、広いとは言えない僕の家にはこれから彼の物が増えていくんだと実感した。
服は借りるからとか何とか、まず下着を何枚も持ってきたのが可笑しかった。この間の事をまだ根に持っているのだと言う。どうせ結果的には必要なかったでしょ、と思っても口には出さないけれど。

明けて月曜日、仕事を終えて帰ると部屋の電気がついていた。少し、ドキドキしながら「ただいま」と言ってみたら「おかえり！」と彼がはにかんだ。
泊まるだけではなく暮らすとなると手に持って運ぶのも限度があるだろうし、それなら車を出そうかと提案したら、そこまで沢山荷物がないと言われてしまって。そっか、と返したのが寂しく響いたのを彼は読み取って、ドライブしたい！なんて言い出したりして。じゃあ少しだけ、とあてもなく夜景を見に行った。
道すがら赤信号で止まったとき彼はキスを強請って「これしてみたかった」と嬉しそうにしていた。何をしていてもどんな瞬間も、やっぱり彼は可愛くて。愛おしい。

僕はいちいち嬉しくて、くすぐったくて。少しずつ積もっていく愛おしさを、両手から零れていかないように抱き締めるような気分でいた。

お互いに読書家だから本棚を増やした方が良いかなぁと考えていたけれど、それまで実家で暮らしていた彼はお気に入りだけを持ってきて僕の本棚に並べた。よく隣で読んでいた本が、懐かしい題名が並ぶ。

「あの頃を此処に閉じ込めたみたいだ」

「俺が読んだの覚えてるの？」

「大体は。僕も読んだからね」

「じゃあ潤も持ってんだ」

だったら置いてくれば良かった、と、俺のやつ邪魔じゃん、と唇を尖らせるから。

「翔くんが好きな本は、翔くんのを此処に置きたいからこれで良いんだよ」

背表紙を指でなぞればまるで自分が撫でられているかのように、よしよしと撫でられる子供のように満足そうに笑った。