「」I miss you…【MS】 (ページ19)

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晴れた休日には釣りに出かけたり、公園で彼がスケッチブックを広げる横で僕は読書したり。
真夏は暑すぎて外で過ごせないからと昼間から涼しい部屋で飲んだくれてみたり。
夕暮れ時が過ごしやすくなってからはベランダで何をするでもなく陽が沈んでいくのをぼんやり眺めたり。

そんな風に日々を過ごして、ある冬の日。たまにそうするように仕事帰り、書店に立ち寄った。
もうずっと探している本が思いもよらず入荷してたりしないかなと棚から棚をなめていたら、図書室で初めて翔くんに声を掛けた時に彼が手にした本の作者の新刊が目に留まった。映画化されていたからなんて理由だったなぁ、と図書室の匂いを思い出して胸が苦しくなった。どうしているのかな。もう僕を忘れたかな。

もうすぐ誕生日だね。二十歳の君は、笑っているのかな。なんて思ったりした。

甘くて苦い気持ちの行き場を見付けられずに、あの図書室で彼が手にした本を買った。
翌日、国語科の準備室でひとりになったタイミングで、久し振りに紅茶を入れて丸椅子に腰掛けてその本を読んだ。
彼が追った文字を、ストーリーを、彼がくれた彼の好きな色のブックカバーが包んでいた。

この頃、もう二度と会えなくても、きっと彼以外を想うことはないんだろうなと思う事が増えていた。

自分の中に在る面影だけを愛して生きていくのも悪くはないと、思ったりもしていた。