53_罪滅ぼし(伊月side) ページ6
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「＿＿＿＿うん、もうちょっとしたら出る所。雪ごめんね、待たせて。＿＿＿＿うん、わかった。夏目食堂までだと10分ぐらいで着くから。」
『なるべく急いで来てね』と言って、雪の方から電話を切った。
「雪ちゃん怒ってるよね・・」
身支度を整えながら、Aが言った。
「まあ、多少はね・・でも、別にAが悪い訳じゃないし。」
それに、
「雪、怒る事なんて滅多にないから。」
「・・そう。」
雪が俺に怒ったのは、一度だけ。
「Aの方こそ、宮地さん待たせ過ぎちゃ怒らせるんじゃない？」
「そ、そうだよ！」
少しすると、完璧に身支度を整えた様子だった。
「出よっか」
「うん。」
嬉しそうな顔。
そりゃそうか、
今からやっと、宮地さんに会えるのだから。
「俊、ありがとね。」
「・・・」
言われる言葉はせいぜい「ありがとう」か。
「公衆の面前であんなみっともない姿・・普通引いて、知り合いだとも思われたくないよね。それなのに俊、私に傘を差してくれて、すごく安心した。」
「・・そっか」
全然、嬉しくないから。
お礼の言葉を言われたい訳じゃないんだよ。
「俊にも今度、クッキーあげるね。」
「え？」
クッキー？
「それって・・谷崎と二人で作ったけど焦がして失敗して断念したんじゃ」
「そうだったんだけどね(笑)昨日、１人で再チャレンジしてみたんだ。」
いや、何で？
A、超がつく程料理が下手で・・
「宮地さんがね、手作りクッキーの味が好きだって」
ああ、やっぱりそういう事。
「他の男に手作りのやつあげるとか、宮地さん的には複雑なんじゃない？」
「そ、そうかな・・」
そうだよ。
「大丈夫だよ。」
「・・・」
何が。
「私と俊は、"ただの"幼なじみなんだから。」
"ただの" 幼なじみ 、か。
「今日は沢山尽くしてもらったし、お礼も兼ねて渡したいんだ。」
あ、そうか。
A、本当に記憶に無いのか。
.
「俺は受け取れない。」
「えっ・・あ、雪ちゃんか。」
まあそれもあるけど、
「Aと宮地さんカップルには、幸せになってもらわないといけないから。」
「え？？どういう意味？」
そうだな・・
「 " 罪滅ぼし " かな？」
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作者名：ぴこ | 作成日時：2018年3月10日 18時
