94_「偽善者」 ページ47
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「ひな待って…、ひなって!」
「……」
昼休みの時間、音沙汰なく教室を出て行こうとするひなの後を追いかける。
「どこ…行くの?」
「……保健室。」
「具合悪いの?」
「うん。今日来たのも、置き勉してた荷物と夏休みの宿題取りに来ただけだから。」
「……ひな、私の事怒ってる?」
そう言うと、ひなはゆっくりと私の方を見た。
「怒っ…てるよね……当然だよね。ひなの気持ち知っておきながら、本当にごめんなさい。」
「……A、ひなは…」
その時、一瞬ひなの動作が止まった気がした。
「……好き、なんでしょ?」
「え…?」
「伊月君。」
そっか、ひなはその事で……
「俊は大切な幼なじみ。そしてひなと同じで、大切な親友。それ以上でも、以下でもない。」
「………好きなくせに。」
「違うよ!」
そこまで思わせる素振り、見せてた?
「……Aはいいよね」
「えっ?」
「スラッとしてて背が高くて、睫毛長くて、綺麗な目してて。」
「な、何言って…」
「敵わないぐらい、お似合いだったよ。」
「なっ……」
そう言うひなの瞳は、微かに潤んでいた。
「ひなね、ずっと辛かったんだよ。」
「え…」
「Aと伊月君が、仲良く名前で呼び合ってる時。」
「____!!」
そんな事、言ってくれたら良かったのに……
「2人が付き合ってるって噂流れた時も、それで今度は私が……言われてた時も」
「ひな…」
「気づいてよって、何度も心の中で叫んだ。」
「………ごめん。」
ひなが受けた心のダメージは、
きっと、私が考えていた比ではない。
わかってはいるんだけど、
今、私に出来るのはただ謝る事ばかり。
「……」
ひなは今、何を思っているんだろう。
「ひなを傷つけたく、なかったんだよね?」
「え?うん」
「"自分を守るため"…じゃ、なくて?」
「え…?」
「自分の好意を誰にも悟られたくなかった……だから、嘘をついたんじゃないの?」
………嘘?
「わ、私は、俊の事は別に好きじゃ「嘘つき」
・・・え、
「嘘つき…、大嫌い。」
私は元々嫌われる立場の人間だから
嫌われる事に、恐れなんてなかった。
「Aなんて大嫌い!」
いつからだろう、こんなに恐くなったのは。
「ひな……私「偽善者。」
その言葉は、今の私にピッタリだった。
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作者名:ぴこ | 作成日時:2018年3月10日 18時