83_良い子(伊月side) ページ36
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松尾からの好意には、1年の頃から何となく気づいていた。
Aを経由してバレンタインも貰ったし、
ああ、そうなんだ……って。
「ひ、ひなね…男の子を好きになったのも、告白したのも、初めてなの・・」
「……うん」
「だから、ちゃんと向き合って思いを伝えたくて…。」
告白されてる最中にこんな事を思うのは如何なものかってなるけど、
初めて告白する相手にそう言える松尾は、
"良い子" なんだと思う。
松尾が良い子だから、
Aは松尾の事が大切なんだ。
松尾は、Aの大切な親友。
「ありがとう。でも、ごめん。今は付き合うとかそういうの興味なくて。」
「・・そっか、うん。わかった。」
松尾を傷つければ、Aはきっと悲しむ。
「…ごめんね」
「謝らないで…気持ち伝えられて良かった。」
だから傷つけないよう、建前の理由付けをする。
「ひな、気まずくなるの嫌だから・・伊月君、これからも友達として接してくれる?」
「うん。」
良かった。
思ったより、前向きだ。
「あとさ・・」
「……」
「伊月君って、Aの事……好き…なの?」
全然良くなかった。
松尾にも、気づかれていた。
「違うよ。なんで?」
松尾に気持ちを知られたら、Aが困る。
大丈夫…
いつもみたいにポーカーフェイスだ。
「伊月君見てると思ったの…Aと話してる時、よく笑うなーって。」
「Aはただの幼なじみ。言ったろ?今はまだ恋愛に興味が無いんだ。」
早くこの話題が逸れてほしい。
「それ、本当?」
「……うん」
「じゃあひな……伊月君の事、諦めないでも良い?」
えっ?
「最初は、Aがライバルになっちゃうんじゃないかって不安だったの・・でも、違うって知ってホッとした・・」
「……」
「初恋だもん。可能性があるんだったら、ひな諦めたくない。」
「……」
「だからまだ、伊月君の事好きでいて良い?」
松尾は、思った以上に芯のあるやつだった。
「………うん、いいよ。」
そんな強い心を持つ彼女を尊敬すると同時に
自分の愚かさを痛感した。
俺は、いつか必ず
松尾を傷つける事になるだろう。
でも、
自分が悪者になるんだったら、それで良い。
Aが松尾に嫌われないんだったら、
それで良い。
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作者名:ぴこ | 作成日時:2018年3月10日 18時