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82_"ただの"幼なじみ(伊月side) ページ35

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「俊にも伝わってたんだ、その噂…」

「うん…」




休み時間、席が隣同士の俺達は

周りに声が漏れない程度に会話をする。




「なんか、ごめんね。」

「いや別に…」




何故Aは謝るんだろうか。

悪いのは、勝手に根も葉もない噂を信じて広めた連中なのに。





「笑っちゃうよね。有り得ない(笑)」

「まあ…確かに」




俺とAが付き合うとか、想像つかない。







『小林A…』

『好きなの…?』







「・・・」





夏目さん、鋭いとこつくな……。


そんな彼女は、また暫く学校に来なくなった。






「でも、もう広まらないといいな、噂。(ひなに悪いし…)」

「……そうだね。」






そんな噂ごとき、皆すぐ忘れるだろうとは思うけど






「もう誤解されないように私も気をつける。」

「……」

「ただの幼なじみなんだから、私達は。」







_____"ただの"幼なじみ、か。







「あ、やばい私日直だ…!」






Aは、今も昔も俺を「"ただの"幼なじみ」という枠から外した事はない。


話してるとわかる。



俺は、違うけど。


自分でも気がつかないうちに、


本当にいつからかわからない。






A、俺は……






「"ただの"幼なじみなんて、思った事は…」


「ん?今、何か言った?」


「………別に何も。黒板手伝うよ」









〜〜〜







明確な時期なんてわからない。


気がついたら目で追ってて、


時折俺に見せる笑顔は、


飾り気が無くて、とても綺麗で、


純粋に「好き」という感情はこの事なんだと


物心つき始めた頃に気づいた。






俺の初恋。


A以外の人を好きになる事は


この先無いんだろうな、と悟るぐらいには


好きだった。






だからこそ、告白出来なかった。


Aの気持ちは聞かずとも知れている。


「好き」とたった一言伝えれば、


「ごめん」と告げられ、振られるだろう。


俺は、誰の事も好きになれなくなる。






誰にもこの気持ちを悟られないようにしよう。


もしバレたとしても、得意のポーカーフェイスで誤魔化して


俺が、Aだけをずっと好きでいられるように。






〜〜〜








夏目さんにバレてたのは意外だった。


もっと用心しないとな。


特に"彼女"に知られては、Aが大変だから…









それは、ある日の放課後の事。







「伊月…君」

「…」







"彼女"…松尾ひなの。








「ひな……伊月君の事が好きなの。」

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作者名:ぴこ | 作成日時:2018年3月10日 18時

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