74_綺麗 ページ27
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「大丈夫？」
「…！」
拾い上げた教科書を、彼女…夏目さんに手渡した。
「綺麗…」
「えっ？」
小さく呟かれた声に反応して、彼女の目を見た
絵に描いたような綺麗な二重瞼の瞳だった。
「……」
「？？？」
夏目さんは、間違いなく私だけを見てそう言った。
その大きな瞳から目を反らすことが出来なかった。
「…A？」
その様子を見ていたひなが、不思議そうに顔をしかめる。
すると、
「うおぉっと！？」
「「…！？」」
さっきまで笑っていた男子の１人が、今度は自分が階段から転げ落ちそうになっていた。
運動神経が良いのか、バランスを保って止まったけど…
「セ、セ〜フ…」
そんな彼の真後ろ…
階段の上に立っていたのは、
「あ、伊月君！！」
「俊！？」
なんと、その男子を階段の上から転ばそうとしたのは俊だった。
「伊月何すんだよ！？」
「ごめんごめん(笑)
最近、『膝かっくん』流行ってるから俺もやってみたくなってさ。」
……いや、だからって俊。
階段は危ないってわかるでしょ…
「教室でやれよなー(汗)死ぬかと思ったぜ。」
……だよね。
「え？危なかったのか？」
「は！？」
危ないに決まってるでしょうが！
…って、一同が思ったに違いない。
「あー、そっかごめん。
さっき夏目さんに同じ事してるの見えたからさ。」
「「えっ！？」」
驚いて声をあげたのは私とひな。
あの人が、夏目さんを故意に階段から転ばせようとしたって事…？
「女の子いじめるなんて最低！！」
「…」
「謝れよ！！」
ひな…
こういう時のひなは、誰よりも凛々しくて格好良い。
「……ﾁｯ」
直後、その場に響いた嫌な舌打ち。
「噂では聞いてたけどマジで顔だけ女。」
「…！」
な…、なんて事言うの！？
「それと、別に俺らいじめなんてしてねーし」
なぁ？と、その男子が階段上へ振り向いて他の男子達に笑いながら尋ねる。
「目の前にちょうど良いデブが居たからちょっと驚かせるつもりで蹴ったんだよ。」
半笑いでそう言いながら、夏目さんの事を目で指していた。
「夏目だって、俺らより丈夫じゃねーの？脂肪が分厚い分＿＿＿」
憎たらしい声で喋り続けるその口を止めたのは
「謝れよ。松尾と…夏目さんに。」
それまで見た事のない、
幼なじみの一喝だった。
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作者名：ぴこ | 作成日時：2018年3月10日 18時
