73_階段での笑い声 ページ26
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「でーあるから、これは過去分詞形のhave beenに____」
学校の授業は、簡単過ぎる。
小学校の時から今も、ずっとそう思ってきた。
中1でやる授業はいわゆる基礎中の基礎。
これを忘れては、高校入試、さらには大学入試なんて挑めたものじゃない。
『キーンコーンカーンコーン…』
チャイムが鳴って、周りの席の人達は一斉に教科書を閉じる。
「やっと終わったー」
「ねえ、次何だっけ?」
「ねてたわー(笑)」
彼等は、所詮目先の幸せに浮かれているだけ。
後に苦労する羽目になる。
私は違う…
小林家に生まれてきた以上、
勉強に専念して、地位の高い人間にならなければいけない。
「___A!Aって!」
「……!ごめん…」
「またボーッとしてたね?」
これは、私の悪い癖だ…
エリート中のエリートである偉大な両親、
名門校の狭き門を難なく潜り抜けた兄…
私だけが、期待に応えられない凡人。
その歯痒さを、クラスメートを卑下することで少しでも払拭しようとしていた。
こんなだから、嫌われちゃうんだ…
「次、理科室だよ。実験だって、早く行こ!」
「……ありがと。」
「?」
今更、クラスの皆から好かれたいなんて思わない。
一部の人達には嫌われたって別に良い……
だけど、
ひなにだけは、嫌われたくない。
こんな事を思うくらい、
私はひなの事が大切なんだな…
「Aなんか今日ヘン!」
「そ、そうかな?」
移動教室の最中こんな事を指摘される。
「実験の班、ひなAの所に行くね!」
「良いけど先生に怒られるんじゃ…」
「大丈夫だ__「お前助けてやれよー(笑)」
ひなの話し声に被るように、
階段の方から大きな笑い声が聞こえた。
理科室は階段を上った2階にあるため、
必然的にその現場と対面する。
「え?ちょっと…」
その光景を目の当たりにした直後、目を見開いた。
階段の下の方で、恐らく転んだと思われる1人の女子生徒。
そして、それを平然と上で眺めながら笑っている四人の男子。
「女の子笑うなんてアンタ達最低!」
強い口調で、ひなが言う。
だけど…
「おっ、ひなちゃんだ〜」
「やべえ目が合ったの初めてなんだけど(笑)」
聞く耳を持たない。
「…大丈夫?」
「……!」
散乱していた教科書を拾った時、
『夏目 雪』
と名前が書かれてあったのが見えた。
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作者名:ぴこ | 作成日時:2018年3月10日 18時