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63_俊の優しさ ページ16

カチ…カチ…


時計の秒針が、拍子を乱すことなく進む音。





「キャハハッそれでさっ」


隣の部屋から微かに聞こえてくる話し声。





『お前アホちゃうか!?』

『アッハッハッハッ』


テレビから流れる賑やかな漫才と笑い声。






全ての" 音 "が、うるさく混ざり合う。


こんなに音を敏感に感じ取ったのは初めて…


ってくらい、外界の音が私の思考を邪魔する。






「どういう事…?」

「・・・」

「俊…」





今朝まで、私の頭は宮地さんへの罪悪感で一杯だった。

後から、俊や雪ちゃんに対する申し訳なさが嫌という程襲ってきて

今度は俊の告白…で、頭はパニック状態。





「俺は、」

「……」

「自分はどれだけ不幸でも、Aには…Aだけには幸せになってもらわないといけない。」

「…え?」

「それが、唯一出来る罪滅ぼしだから。」





何言ってんの…意味がわからないよ。



それに昨日も言ってたけど、

"罪滅ぼし"って、何…?





「大丈夫。Aは何も悪くないから。すぐ宮地さんと仲直りできるよ。」

「だからどういう事?」

「わからなくてもいい。俺が何とかする。」





はぐらかさないで最後まで答えて!

と、反論しようとした。


だけど、いつもみたいな優しい笑顔を向けられると何も言えなくなる。





「コーヒーゼリーありがと。」

「か、帰るの?」

「うん、ちょっと行く所あるから。」





そう言うとそのまま立ち上がり、玄関まで歩いて行った俊。





「ごめんね、変な事言ったりして。もう昔の事だから気にしなくていいよ。」

「う、うん…」

「温かくして、ゆっくり休んでね。」



「じゃ。」と、最後に此方に微笑みかけた俊は、昔から知っている幼なじみの彼だった。








「俊…」




暫く私は、玄関床に座り込んでいた。





「俊…ごめんね…ッ」






知らなかった。

宮地さんだけじゃなかった。

私の事を好きでいてくれた人。






『Aは酒弱いし、危ないだろ?』


『なんか今日、元気なさそうだけど?』


『・・また不安そうな顔。』




思えば俊は、誰よりも私の事を気にかけてくれた。




それが"世話焼き"と感じることもあれば、

安心して嬉しくなったりもした。




例えそれが私に対する恋愛感情から来るものだとしても

そんな俊の優しさには何度も助けられた。





でもやっぱり、私は何もしてあげられなくて…


宮地さんの時と、全く同じじゃん。







こんな自分、大嫌い。

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作者名:ぴこ | 作成日時:2018年3月10日 18時

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