【文スト】裏切りの甘美なる、

序章 ページ1

きれいは、きたない






「ほんとに、お母様そっくりね。」





きたないは、きれい。



「賢く美しい...。でも、あんなにお母様そっくりじゃあ、....ねえ？」




リボンにレエス、
色とりどりのドレスと煌びやかな宝石。


淑女という名の仮面を被った、道化達。


決められた格式(ルール)を、
忠実なまでに守り、そしてそれを破ったものには、冷酷非道を極める、

井の中の蛙。

私は母にそっくりだという。

そんな母は、露西亜の社交界では禁句(タブー)である不倫をし、世の視線と葛藤に耐えられず、

自らの命を経った。



父は禁句を犯した母を許し、

" こんな私の " 将来を案じ、
両親の子として、"カレーニナ"として、生かしてくれた。



そう、私は母とその愛人の子である。


母を否定する気はない。
母の行いを否定する気もない。

生物学上の父である母の愛人を、否定する気もない。


だって、本当に、二人は愛し合っていたのだから。



格式？

ルール？

禁句？

神？



世の理が、正義か悪か、

そんなもの、私にはわからない。



わかるのは、

人は求める幸福のために、格式も、正義も、悪も、いい様に利用しては、



また聖者のように仮面を被るのだ。

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