前日譚�� ページ1
(はぁ……今日も学校、行けなかったな…)
一人になるといつもこう。学校に行けない自分に嫌気が差す。元々学校で浮いている存在だったけど、休みがちになったことによってもっと浮いた存在になっちゃった。
「………」
双子の兄は学校に行って、弟は私と同じで身体が弱いから、静養中。やることもなくて暇だから、身体を起こしてノートを手に取る。
_______ 昔、家族でいったテーマパーク。
そこで見た、一つのショーが今でも頭の中で輝いている。
私はそのショーが大好きで、目が離せなくて、毎日毎日その話を兄や弟にしていた気がする。……もちろん、両親にも。
兄は、そんな私の話を親のように相槌を打ちながら適度に笑って話題にも混ざって、聞いてくれていた。私や弟と違って、大人びていて────。苦しそう、だった。気がする。
弟も、体質的な問題もあって病弱で、あの時行ったテーマパークの日は本当に偶々、日差しが出ている中、日傘をさして歩いても問題ない日で、皆で行ったときだった。
いつも私や兄が居ない間、つまらなさそうにしていた弟も、テーマパークに行って、ショーを見て笑顔になった。
つまらなさそうにしている弟を笑顔にして楽しませたい！苦しそうな顔をしている兄を、笑顔にして助けたい！
そんな一心から、私は一人でショーを始めた。最初はふたりとも驚いていたけれど、とても楽しそうに観てくれていた。
_______ 私がこうして、病弱な身体になるまでは。
(昨日書いてた話の続き、書こう……)
ノートを開いて、ペンを握る。
今の私には、あんなキラキラしたステージの上には立てない。それでも、私は私の作り上げたショーで、兄や弟を笑顔にしたかった。
_______ だから。
私が書いた脚本を、いつか誰かに演じてほしい。そのショーを見た兄や弟が、笑顔になれたら。
_______ どんなに、素敵なことだろうか？
「ただいま」
「…！あ……お兄ちゃん」
「また話を書いていたの？俺にも見せて」
「……うん。今度の話はね─────」
私の脚本を演じてくれる人すら、私は見つけられないと思うけど。
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作者名：たすく | 作成日時：2024年3月12日 13時
