地縛霊―31― ページ31
『私、真が好き』
俺が今こいつを、どれだけ同じように抱き締めたいか
でも、Aの涙は俺のシャツに染みさえ残さない
『私の事、怖がらないのも嬉しかった。話しかけてくれて、喧嘩して、ご飯作ったり、掃除したり、いってらっしゃいって言ったり、おかえりって言ったり……全部全部、私にとって特別な日々ばかりだった。
ずっと外だけを眺めるだけの私に、真がもう一度私を生き返らせてくれたの。それが、どれだけ幸せだったか……』
Aはずっと、終わりの見えない時間を、ただひたすら……過ごしていた
この部屋で、ただ一人、ずっと……
何もできないというのは、ある意味忙しいより苦痛なのかもしれない
『だからね、成仏するって決めたの。この幸せを、本当は手放したくない……でもね、真の事は、もっと手放したくないって、思っちゃった』
「それなら、どうして成仏なんか……」
『言ったでしょ?私は幽霊だから、真の隣にはいられない。でも、成仏して、生まれ変わったら……真のもとに、帰るよ』
「そんな確証もない話、信じろっていうのかよ」
『できるよ。だって、真と私が出会えたことに、意味がなかったなんて……そんな事、絶対ない。私は、そう思う』
Aが真っ直ぐな目で俺を捉える
「……お前の目は、いつも穢れがない。わがままで、人の事振り回して、俺とは正反対の人間の癖に……どうしようもなく、好きになった。お前が人間だったらって、何度も思った……」
『真……』
「迎えに行く。お前は俺なんか忘れるかもしれないけど、それでも……必ず見つけ出す。お前は俺のものだって、思い出すまで言ってやる」
『うん、うん……!絶対、帰るから……!真のいる所が、私の家だから……!』
俺達を照らしているオレンジの光は、だんだん色を失い始める
もうすぐ西日が沈む
『真、最後にもう一度、私の名前を呼んで?絶対にその声を、忘れないから』
「……A。愛してる」
まばたきをした、ほんの一瞬の出来事だった
Aがいつものように、笑おうとしたその時。俺の目の前にはもういなくなっていた
「……A?」
あまりの実感の無さに、もう一度名前を呼ぶ
でも、その声は空虚に消えるだけだった
部屋に温かさがなくなったかのように、虚空が俺を包む
その事実を受け止め、静かに俺の頬に涙が伝う
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みかん(プロフ) - 五月雨雫さん» わぁぁコメントありがとうございます(´;ω;`)!!!完結後にも感想をいただき本当に嬉しいです(泣)おかげさまで私も作ってよかったと思えました!!またどこかでお会いできることを楽しみにしています(*‘∀‘) (2020年5月11日 9時) (レス) id: 7906a9a948 (このIDを非表示/違反報告)
五月雨雫(プロフ) - 全話読ませてもらいました!!凄く好みの感動系でなんと言ったら良いか…!作品、物凄く好きです。読者一意見として作ってくださってありがとうございます!! (2020年5月10日 8時) (レス) id: 603d70d68d (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - さくみさん» ご丁寧に返信までいただきありがとうございます(泣)感謝感激です(´;ω;`)これからも誰かに感動してもらえるような作品を作れるように励もうと思います!こちらこそありがとうございました(泣) (2019年11月20日 11時) (レス) id: 7906a9a948 (このIDを非表示/違反報告)
さくみ(プロフ) - こちらこそ本当に素敵な作品をありがとうございました。最後のお話で本当に感動で泣けました泣ありがとうございました!!! (2019年11月19日 23時) (レス) id: 7862236ae4 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - さくみさん» あああぁぁああぁ(嬉し過ぎて語彙力が著しく低下しました)笑。コメントありがとうございます!!まさか、自分の作品で感動していただける日が来るとは……その事実に私も感動しました(泣)作ってよかったと思えました!!本当にありがとうございます!! (2019年11月19日 22時) (レス) id: 60ab1a28d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みかん | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/alice99101/
作成日時:2019年10月1日 17時