19 ページ19
暫く水に身体を慣らしたあと
ゆっくりと水面から顔を出せば
彼は慌てて目の前に屈んだ
戸惑いの色を含んだその瞳に
私の上半身だけが映る
「服は＿＿＿どうしたんだい？」
「ちょっと、第一声がそれ？」
彼は、髪で隠れた私の胸をちらりと見ると
その視線を逸らした
とは言え、ものすごく今更な気がするのだが＿＿＿
「こっちを見て、ちゃんと、話しておきたいから」
私は彼がこちらに視線を戻したのを確認して
ゆっくりとその尾を彼の前に晒した
みるみる間に青ざめていくその顔と
大きく見開かれた目、
「嘘ついてて、ごめんね」
人喰い人魚、だとは言わなかった
でもこれで彼が離れてくれればいいと思った
けれど＿＿
「ああ、やっぱり、君は
髪色が変わっても凄く綺麗だね。」
返ってきたのは予想外の返答
くたびれた笑みを浮かべ
その手を伸ばして私の髪に触れる
「怖く、ないの？私人間じゃないんだよ？」
「私だって人間じゃない。」
「でも＿＿＿」
「だからずっと、人魚の話をしていたんだね
全く私をなんだと思ってるんだい？
このくらいじゃあ、君から離れる
理由にはならないよ。」
彼は、にっこり笑うと
その温かい手で私の頬に触れた
触れられたところから伝わる温もりに
思わず、涙が零れ落ちる
「君の全てを私は受け止める
何があろうと私が君を守るから
だから君は、ただ、そこで生きていればいいんだ。」
彼はせっかく身体が乾いているのに
そんなのお構い無し、と
身を乗り出して私の身体を抱きしめる
「リーマス、私、」
「時々、こうして泳ぎにこようか。」
「生徒にバレちゃう」
「じゃあ、満月の夜に＿＿
私が湖の傍で君を守るよ。」
「貴方が？」
狼になった彼の姿に思わず笑みが零れる
直接、その姿を見たことは無いが
きっと狼になった姿も愛らしいのだろう
「ところで、湖から上がったら
人間の姿に戻るのかい？」
「もちろん、ほらね？」
湖から上がればたちまち
エメラルドグリーンの尾は足へと変わり
けれど、服は戻らないまま
「その格好じゃあ、まずいね。」
彼は自分の継ぎ接ぎのローブを脱ぐと
私の身体にかけてくれた
鼻を掠める彼の香りに思わず頬が緩んでしまう
「このこと、校長は知っているのかい？」
「そりゃあね、おじいちゃんだもの」
そっか、と彼は
いつものくたびれた笑みを浮かべ
私の身体を抱きかかえる
いつもなら抵抗するのだが
今日は大人しく、そんな彼に甘えることにした
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
usagi(プロフ) - 弐七さん» 有難う御座います、凄く嬉しいです。是非、最後まで楽しんでいただければと思います：) (2019年12月8日 12時) (
レス) id: 569eb0a44e (このIDを非表示/違反報告)
弐七(プロフ) - あーーー！！！もう！！このシリーズ読んで何回泣いたんでしょうか…。もう、もう、言葉が出ないほど甘くて、切なくて、二度ほど読むのを止めたくらいです（笑）。でも本当に心がぐっと掴まれる作品だと思います。最終章楽しみです。もう待ちきれません。 (2019年12月6日 22時) (レス) id: c70bc84ad6 (このIDを非表示/違反報告)
usagi(プロフ) - エマさん» 有難う御座います、次の更新は12月の中旬になってしまいますが実習を無事に終えて必ず戻ってきますので！二人の結末を最後まで見届けて頂けると嬉しいです：) (2019年12月1日 15時) (レス) id: 569eb0a44e (このIDを非表示/違反報告)
usagi(プロフ) - 梨音さん» コメント有難う御座います、2人の結末がどうなるのか、一緒にしっかりと見届けましょう！ (2019年12月1日 15時) (レス) id: 569eb0a44e (このIDを非表示/違反報告)
usagi(プロフ) - no nonさん» いつも有難う御座います！二人がどんな結末を迎えるのか、最後まで見届けて頂けると嬉しいです：) (2019年12月1日 15時) (レス) id: 569eb0a44e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：usagi | 作成日時：2019年11月26日 22時
