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隆二さんは「Aのこと言ってんだけど」と、私の顔を覗き込んだ。
「遠い場所で生まれ育った俺らが、ある場所で何億人といる中で出会えるって……奇跡みたいで」
「奇跡……」
「最初に会った夜、Aが店に入ってくる瞬間を俺が見逃してたら二人は他人のまんまだったわけで……そういう奇跡みたいな出会いを“たまたま”って片付けるのはちょっと寂しくない？」
1秒違ったら、隆二さんは通り過ぎるだけだったかも知れない人────。
あの夜、隆二さんが私を見つけてくれてなかったら
あの夜、私がもっと早くタクシーを捕まえてたら
今隣に居るのは隆二さんじゃなかったかもしれない。
「だから俺は、出会いって運命だと思うんだけど……って……ねぇ！くさいこと言わすのやめてくれる？」
隆二さんは照れ笑いを浮かべ、モヒートを一気に飲んで“ふー”と息を吐いた。
「私も……」
「うん？」
「私もね、隆二さんと出会えたことは奇跡みたいだって思ってました。でも運命とは思ってなくて……って言うか、運命って言葉好きじゃなくて」
「でも今は？」
「……運命って、良いかもって思えます」
「かも？」
「い、良い！良いです！言い切ります！」
私が笑うと、隆二さんも笑って「くさいこと言って良かった」とまた頬杖をつく。
テーブルに置かれたキャンドルの炎が、その端麗な横顔を柔らかく照らしていて、
私は生まれて初めて知った甘さを味わうように、彼に見惚れた。
────隆二さん、私たちが本当に運命の出会いだったら
この先どうなるのかな。
でも、全部分かっちゃったら楽しくないよね、きっと。
「……ね？」
「ん？」
「ううん」
潮風が気持ちいいテラスで、私は隆二さんの肩に頬を寄せました。
「ほっぺ熱くない？」
「……飲みすぎたかもしれません」
今度誰かに“隆二さんと出会う運命だったんだ？”と聞かれたら、
私は迷いなくこう答えるでしょう。
.
“じゃない？”
.
.
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1月2日
運命という言葉にはこんな意味もある──“将来”
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2019年2月5日 20時
