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呼ぶな ページ29

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悠仁のささやかな抵抗も虚しく、一度引っ込んだはずの口は頬を抑えていた手の甲に再び開かれる。

鋭く尖った犬歯は、陽の光に照らされギロリと妖しく光っていた。






「貴様にも仮があるからなァ。小僧の体ものにしたら、真っ先に殺してやる」


「……宿儺に狙われるなんて、光栄だねえ」






言葉の矛先を向けられた五条先生はというと、いつもとなんら変わらない様子で面白そうに笑っている。


私はそんな状況を眺めながらもゆっくりと目を逸らし、静かに悠仁の背後に移動しようとした。


正直、また目をつけられて散々言われるのはゴメンだ。



だから逃げるが勝ち。そう、判断したのだが






「……おい小娘。どうした?逃げるのか」






……安易だった。投げかけられた言葉を聞いて、そう考えを改める。


私が硬直したのが分かったのか、悠仁と先生は動かしていたはずの足を止めこちらを振り向いた。






『そうね……本当は逃げたいけど、生憎あんたのおかげでそれすらできなくなった。どうしてくれるの?』


「……さあな。そんな面倒なこと、一々俺に聞くな」






悠仁の手の甲を釣り上げ、ニタニタと笑う口。

それを見ただけで、今アイツがどんな顔をしているのか容易く想像できた。


それが無性に腹立たしくて、私は自分の下唇を噛み締める。






「ククッ……良い顔だッ。オマエは俺を楽しませるために、生涯苦悶しながら生きていればそれで良い」






宿儺はそれだけ言い残すと、満足したように悠仁の体からその気配を消した。


……まるで本当に玩具としか思っていないような言葉に、私は肩を落とし落胆する。



その頭の中ではアイツに言われた「生涯」という言葉がぐるぐると回っていて、心の底から最悪な気分になった。







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縁→←開いた口は塞がれる



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いか焼き - 好きです!!! 最高すぎます、、、応援してます!今から2を読んできます!楽しみすぎる…! (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 宿儺の声が頭の中で聞こえたらワイある意味死んでう( ´ཫ`)って思いながら見ました←めっちゃ面白いです!!応援してます( ˃ ˂ ) (2022年1月25日 0時) (レス) @page31 id: dce21dc0b1 (このIDを非表示/違反報告)
古椎エゴ(プロフ) - Tomorrowさん» ご指摘ありがとうございます。変換ミスしていたみたいです!知らせていただき助かりました! (2022年1月24日 17時) (レス) id: c3c7b307dc (このIDを非表示/違反報告)
Tomorrow(プロフ) - コメント失礼します。とても面白くて何度も読み返してます!ところでなんですけど、祥子ではなく硝子だった気がします!間違えてたら申し訳ないです! (2022年1月24日 17時) (レス) @page30 id: 81fe567fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ミーコ(プロフ) - 面白いです!宿儺推しなのでこの話はとても好きです!がんばって書いてくださいね!応援しています! (2022年1月23日 23時) (レス) id: b974f3c01e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年1月22日 17時

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