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苦渋 ページ27

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「……すげえ山ん中だな。ここほんとに東京?」






豊かな自然が広がる山道を歩きながら、悠仁が言った。


東京駅から随分と離れた街外れの山の中、私達はコンクリートで整備された車通りの少ない車道をゆっくりと進んでいる。






「東京も郊外はこんなんよ」






そう言って笑った五条先生の声に、私は頭の中で考える。


東京と言っていたから、てっきりもっと街中の喧騒に囲まれた学校を想像していたけれど、この辺りの風景は宮城の田舎町と何ら変わらない。

なんだったら、向こうの学校よりも田舎にある。


まあ想像とは少し違ったけれど、毎日行き交う人の波と排気ガスの騒音には困らされなくて済みそうだ。






『そう言えば、伏黒くんは大丈夫なんですか?結構大怪我だったみたいだけど』






不意に気になって、私は隣を大きな歩幅出歩いていた五条先生に尋ねる。


昨日一緒に治療を受けたが、医者も驚いていた。どうしたらこんな派手に怪我するのかと。

まあ、正直私もそう思ったよ。

とは言え「呪い」って存在を知る前まではの話だけれど。






「心配しなくても、術師の治療を受けて今はぐっすりさ」


『そうですか。それなら良かった……』






私達のせいでもし彼に万が一のことがあったら、責任を取れるかは不安だ。


もちろん迷惑をかけた人には最善を尽くすつもりだけれど、金銭関係の話はできればあまり聞きたくない。


なにせこちとら親もいなければその親代わりも昨日亡くしたばかりなもんで、口座にある金額と言えば時給900円のバイト代をコツコツ貯め続けた100万にも満たない貯金だけ。


じいちゃんの年金で多少は賄えていたものの、もうそれには頼れなくなる。

そう言えば、それについての連絡も早めにしておかなければならないんだったっけ……。






『はあ……相続の手続き云々まとめて、本当に面倒くさい』






苦虫を噛み潰したような顔をして言った私のぼやきは、木々がざわめく自然の音に流されるかのごとく静かに消えていった。







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いか焼き - 好きです!!! 最高すぎます、、、応援してます!今から2を読んできます!楽しみすぎる…! (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 宿儺の声が頭の中で聞こえたらワイある意味死んでう( ´ཫ`)って思いながら見ました←めっちゃ面白いです!!応援してます( ˃ ˂ ) (2022年1月25日 0時) (レス) @page31 id: dce21dc0b1 (このIDを非表示/違反報告)
古椎エゴ(プロフ) - Tomorrowさん» ご指摘ありがとうございます。変換ミスしていたみたいです!知らせていただき助かりました! (2022年1月24日 17時) (レス) id: c3c7b307dc (このIDを非表示/違反報告)
Tomorrow(プロフ) - コメント失礼します。とても面白くて何度も読み返してます!ところでなんですけど、祥子ではなく硝子だった気がします!間違えてたら申し訳ないです! (2022年1月24日 17時) (レス) @page30 id: 81fe567fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ミーコ(プロフ) - 面白いです!宿儺推しなのでこの話はとても好きです!がんばって書いてくださいね!応援しています! (2022年1月23日 23時) (レス) id: b974f3c01e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年1月22日 17時

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