【東方project】甘く冷静な恋を貴女と。【短編集】 (ページ12)

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たまには甘えたい―【チルノ】ページ12

夏は苦手だ。嫌いというわけではないが好きでもない。尋常じゃないくらい汗はかくが、アイスは美味い。夏のアイスは大好きだ。特にガリ○リくんは。
だが幻想郷にそんなものは存在しない。仕入れてくるのは八雲紫か香霖堂だけであるが、そんな場所まで行けるほどの気力を持ち合わせていないAは霧の湖付近でバテていた。

「あっちいよ～……日焼けする～」

匍匐前進で湖に手を突っ込む。これが最高に気持ち良い。
充分に手が冷えたあと、靴を脱ぎ、両足を湖に入れる。大の字になって寝そべり、太陽の光に眼をくらませる。

「あ～…冷たいものが食べたい……」

そう嘆くAの頭上に爽やかな色をした妖精が姿を現した。

「お前なにやってるんだ？」
「お～、チルノ～。ちょうど良い時に来たな」
「な、なんだよ。ちょうど良い時って…」
「良いから、こっちおいで」
「あ、アタイでも分かる…！いやな予感がすると…！」
「大丈夫だから、早く」

チルノの手を引っ張り、強引に膝の上に座らせる。
真夏にも関わらず、チルノはひんやりしている。ゆえに、水よりも気持ち良い。氷精だもの。

「いつまでこうしてるつもりだよ～…アタイ暑いんだけど」
「うん…？夏が終わるまでぇ……」
「え～！？アタイ溶けちゃうよ…」

膝の上で騒ぎ立てるチルノをよそにAはその冷たさに声を漏らす。A自身、氷龍なため冷気くらい操れるだろと言う氷精のチルノに言われるも、そんな気力ないし面倒だよと言い返す。
騒ぐわりにはどっかに逃げたりしないのかと疑問に思いつつ、騒ぐチルノを尻目にまぶたを閉じる。
太陽の光がまぶしいが、暑いよりはマシだ。

「ねえ～、アタイ暑いよ～」
「ん～」
「ん～、じゃなくて～。水浴びしてもいい？」
「どうぞお好きに～」

膝上から湖へと移動し、水浴びを楽しむチルノ。それをそっと見守るA。

「チルノ、あとで香霖堂にでも行く？」
「うん？なんで？」
「冷たい食べ物あるからさ、せっかくだし、どう？」
「行く！」
「よし、早速行きますか」
「お～！Aのおごりだ！」
「なんか頭良いな……」

他愛のない会話をしながら、冷気を操る妖怪と妖精は香霖堂へと向かって歩いていく。
またバテてしまないように、日陰を歩きながら。手をつなぎながら。