【東方project】甘く冷静な恋を貴女と。【短編集】 (ページ2)

今日:5 hit、昨日:9 hit、合計:22,079 hit

境界越しの恋―【八雲紫】ページ2

こんなに天気の良い日は不思議と眠たくなる。
瞼を閉じると眠気が一気に襲ってくる。ああ、もうダメだ…。

「…………A、いつまで寝てるつもりなの？いい加減起きたら？」

聞き慣れた声に氷龍は、いやAと呼ばれた少女は目を覚ました。

「おはよう。久しぶりね、貴女と会って話すのは」
「……なんで、紫がここに居るんだよ」

紫と呼ばれた妖怪の賢者、スキマ妖怪は優しげな笑顔を浮かべ、Aの頭を優しく撫でた。

「さあ…なぜかしらね？そうね、あるとすれば、貴女に会いたかったから」
「ふ～ん…」
「…反応薄いけれど、何かあった？」
「別に。何もないよ」

Aの上辺だけのような返事に紫は本当かと聞き返した。本当だとAは言い返す。

「まあ、貴女がそう言うなら信じるわ。でも、無理しすぎは良くないわよ」
「…分かってるよ」
「あぁ、そうそう。貴女の寝顔、案外可愛かったわ。いつもはあんなに冷静でカッコいいのに」
「……紫は私のことそう思ってたのか」
「そう思ってたって？」
「…私のこと冷静でカッコいい、って」

そう聞いた瞬間、紫の頬は赤く染まり、顔を手で覆った。
Aは紫を見上げて、少し嬉しそうに―。

「ありがとう、紫」

その笑顔に紫は一粒の涙を零した。
なぜ紫が一粒の光を流したのかは、Aは知らない。それは紫のみぞ知る。