ともだち�� ページ30
『清海A』
「あっ、ジュンくん戻ってきてたんだね！」
「お手洗いは済んだの？」と悪気なく尋ねる巴さん。
漣先輩は呆れたように、「はいはい」と返す。
『無事に買えました？』
「うん！ じゃあ一本はAちゃんにあげるね！ あとジュンくんも！」
「どーも。ああ、ペンですかぁ」
「このノートはぼくのだね！ Aちゃんに選んでもらったもんね！」
頬を膨らませながら、巴さんはノートを庇うようにして抱く。
しかしすぐにいつもの調子に戻って、さっきレジ前で買っていた何かを掲げた。
「じゃじゃーん、シールだね！」
「シール？ 何に使うんです？」
「ペンに貼るの！ 無地だし、もっと可愛くしたいね！」
可愛らしい動物が並んだシール。
漣先輩には犬、私にはイルカをくれた。
『巴さんはパンダって感じしません？』
「そう？」
『ほら、動物園の人気者だし。』
「そういうことならぼくはパンダにしてあげるね！」
適当に言った理由で採用されてしまった。
漣先輩は貰ったシールをどこに貼ろうか熟考している。
そんなことは気にもせずに、巴さんは漣先輩の肩をトントン叩いた。
「だぁっ！ 失敗しちまったじゃねぇですか！」
「ねぇねぇジュンくん、『凪砂くん』には何が似合うと思う？」
「あぁ？ 『ナギ先輩』は……そっすね、コアラとかで良いんじゃねぇですか？」
投げやりにそう言って、「あの人も絶滅危惧種っぽいし」と付け加える。
どういう人だそれは。
「たしかに色味的にもばっちりだね！」
「あれ、『茨』のは買ってないんですねぇ？」
「『毒蛇』はペンに困ってなさそうな顔してるから別に良いね。」
本当にどういう人だそれは。
先程から繰り広げられる身内話に割りこみたくて仕方ない。
しかし、楽しそうに会話している彼らに水を刺そうとは思えなかった。
ーーー…
「Aちゃん、今日はありがとうね！」
『あ、いえ。こちらこそ。』
「……それじゃ、また。」
『はい、また。』
家の前で手を振ってくれるふたりに手を振り返す。
そして、家の中に入って靴を脱いだ。
静まり返った無人の家。
手を洗ってからリビングに戻ると、キッチンに一つの小瓶が出しっぱなしになっていた。
『あ、忘れてた。しまっとかないと。』
調味料の棚に静かに戻す。
頭の中には、混乱したような彼の顔が浮かんできた。
そんな自分に、少しだけ笑ってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 324人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
生しょうが(プロフ) - にゃーちゃんさん» うわぁぁ！更新できず申し訳ないです！！面白いだなんて照れますね…！これからも読んでくれると嬉しいです！！ (2022年12月17日 12時) (
レス) @page26 id: 9fefad8449 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 初コメ失礼します！とても面白くて、引き込まれる様に一話から最後まで全部読んでしまいました…!!続きがとても気になります！更新頑張って下さい、楽しみにしてます！ (2022年12月14日 15時) (レス) @page25 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
生しょうが(プロフ) - 空桜さん» こ、こんな長編を一気読み…!?（大歓喜）ハマっていただけて嬉しいです！あとちょっとで投稿ペースも戻ると思うので、これからも見守っていてください…！笑 (2022年11月23日 20時) (レス) id: 1856a8e0e6 (このIDを非表示/違反報告)
空桜(プロフ) - 初めまして、更新お疲れ様です。昨日から一気読みするくらいハマってしまいました笑 イベントやスカウトを交えつつオリジナルのお話を読める作品は中々なかったので新鮮です。お知らせも読みました。ご自身のペースで無理はなさらずに頑張って下さい (2022年11月19日 21時) (レス) id: bedbd72616 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：生しょうが x他1人 | 作成日時：2022年10月29日 16時
