＊目にも涙 ページ8
「……変ねぇ。貴方は私を別に好きじゃないでしょ?救いに来るなんて、裏がありそう」
「まだ、伝えてなかったですね」
「………」
一呼吸置いて、言う。
「好きです」
私の、貴女へ伝えられなかった想い。
「………」
A様は無反応だった。まあ、今さらだと思うだろう。
「それは……あはは。そうね。うん。もぉ、早く伝えなさいよぉ」
「すいません」
楽しそうにクスクスと笑う。だが、そんな茶番をしている暇はない。
「……Aさん。私と共に生きましょう」
私は彼女に手を差し出す。
が、
「ごめんね……ジャーファル。私はそっちに行けない」
彼女は私の手を取ろうとしない。
私は聞いた。
「何故です」
「私は罪もない人間を殺してきたから」
「それは私も同じです」
「私は貴方より長く生きて、殺している」
なかなか私の言うことを聴かない。その場から、動こうとしない。
いや、それとも、動けないのだろうか。
少なくとも体を前にはまだ倒せる。彼女の意思でも、動こうとしないと。
「……私を、愛しているのでは?」
それに彼女は沈黙した。
そして、
「愛してる。愛してるに決まってるじゃない」
「ならなぜ、愛しているのなら」
「愛してるからこそ。言ってるの」
Aさんは微笑む。
「……あの世界は残酷よ。私は犯罪者、いえ、殺人鬼。怪物だし。
シンドリアの政務官が、そんな私といればどうなるかわかるでしょう?」
評判が落ちる。
政務官としての八人将としての評判。
シンドリアの評判が。
「……その理屈のようなものを、貴方は破壊させるのではなかったのですか」
彼女は首を横に振る。
「もう無理。こうなってしまっては。結局、怪物でも、あの世界を造った怪物を越えた、
王には勝てない。」
身に染みてわかったわ。彼女が自嘲的に言う。
けれど、
「どうでもいい」
「え?」
ずっと暗い方向へ考えていて、さっきよりもひどくなった鎖を握り、
引っ張る。千切ろうと。
「貴女が今まで生きてこられた目的を諦めても、私は貴女を生かす」
もっと力を込めて。
「ダメ。ジャーファル。離しなさい」
「………」
なだめるように言うAさんの言葉を、無視して、続ける。
「ジャーファル。離しなさい」
「………」
「ジャーファル、離しなさいって言ってるの」
「……」
「……離しなさい!」
何度も何度も、諦めさせようと、Aさんはする。
だが、
「ああもう、まったく」
「?」
私は力を込めたまま叫ぶ。
彼女に向かって、
「黙って人の話を聞け、ババア!!」
「は?」
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