会うは別れの初め。 ページ2
ジャーファルside
「最近、卦凰帝国からの品物が渡らなくなってきているんだ」
シンに呼び出されて、私はその話を聴いた。
品物が渡らなくですか。
「考えられるのはやはり、不都合ででしょうか」
「うむ……だが、いくら連絡を取ろうとしても、取れないんだ」
それはどうしたんだろうか。
あの時の夜をふと思い出す。
そう言えば、あの時は何故か、泣いたなと。
「きっと大丈夫で___」
と、その時バアンッと扉が思いっきり開いた。
その方向を驚いて見ると、菊犂殿と神覇殿、そして
「A様?」
菊犂殿の腕の中には彼女がいた。
とても、やつれている。強気な彼女が、弱く見える。
はぁはぁと荒い息をしながら、言う。
「……じ……や、ふあ……ん……」
なんと言ったのだろうか。
彼女は、呂律が回っていない。何故だろうか。
「ジャーファル殿。此方へ」
「……はい」
神覇殿に言われ、私はA様に近付いていった。
A様は力弱く微笑む。
「はあっ……っ……ああ、あえ、た……」
と。
そう言ってA様が私の頬に手を添える。訳がわからなく、私は聴いた。
「これはどう言う事ですか?」
「……A様は、もうすぐ死に至ります」
「は?」
急にそんな事を神覇殿が言う。
けれど、冗談では無いようで。神覇殿は、真剣に此方の眼を見つめる。
「………」
A様はただただ、私の頬を撫でて、幸せそうに微笑む。
すると、
「もうこれまで!」
と、菊犂殿が大きな声で制した。
A様と私を引き離して、帰ろうと足を進めた。私は慌てて、言う。
「待ってください!もう少しだけ__」
「わからないの!!?」
菊犂殿はキッと此方を睨み、言う。
「あんたらのせいで、A様がこうなってるのよ!あんた達が、関わらなかったら、いまこうなってなかったのに!」
今まで溜めていたものを解き放つかのように。
菊犂殿が叫ぶ。
「A様は!……永遠の時は生きられない。でも、こんな早くに死期は迫ってこないのよ!
この意味がわかる!?」
わかる。
だってそれはつまり、
「私達が情を与えてしまったから__」
きっとそうだ。
《天使》になり、情が薄れていた彼女。
そんな彼女に、私達が情を与えて人間味を戻してしまった。
いけない事だった。
「あいあ……と……お……あいし、え……う」
とA様が何かを言った。何を言ったか、わからなく、聴こうとしたが
菊犂殿は足を進めて、神覇殿も行った。
その言葉は後でわかった。
彼女は私にこう言っていたと。
『ありがとう、愛してる』
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