56.「鬱屈したもの」 ページ17
「いただきます」
いつもより少しだけ早くに起こされた僕たちは気怠げに食事を始めた。
それに構わずいつも通り豪快に食べる十四松と、目は完全に覚めきっているが元気がまるでないトド松の姿が見ながら味噌汁に口をつけ、少しだけいつもと違う違和感を感じた。
「……うはー!ほうれん草美味いっすね!?ね、トド松!」
ふとトド松の異変を気にかけたのか、十四松がさりげなくトド松に話を振った。
そこで、僕は今さっき感じ取った違和感の正体に気がつく。
「十四松、今日のはほうれん草じゃなくて小松菜だよ。ほうれん草はお浸しになってる」
不意に、後ろから声が聞こえた。
何気なく振り返ると盆を手にもったAが卓袱台にお茶を置きに来たようで、それぞれの色がついた湯飲みを丁寧に置いていった。
「あ、そーなんすか?!でも、いつもはほうれん草っすよね?!」
「お母さん、小松菜好きだからね。……たくさん食べてね、鍋の中にまだあるから」
そういってAは早々に居間から出て行って、階段を上っていった。
母さんが好きな小松菜を入れたってことは、いつもの味噌汁は母さんが作っているわけではないということだ。
そうしたら、味噌汁にほうれん草を入れているのは誰なのか。
確か、Aがほうれん草好きだった。
昔、よくほうれん草の料理を一緒に食べた記憶が残っている。
じゃあ、いつもはAが味噌汁を作っているのだろう。
「っていうか十四松ゥ、お前いつからAと普通に話せる仲になったんだよ?!」
僕が味噌汁について思案を繰り広げている傍らで、少し必死そうにおそ松兄さんが十四松に声をかけた。
すると十四松は逆に不思議そうな顔をして、おそ松兄さんにこう返した。
「えー?兄さんたちは、まだ仲直りしてないの?」
ぎくり、と僕の肩が鳴る音がした。
僕だけじゃない、先ほどまで気力をなくしていたトド松や、おそ松兄さんも肩を鳴らしていた。
「えっ?いや、な、なに言ってんの十四松〜。それを言ったらカラ松だって……」
「え、いや俺はもう仲直りしたぞ」
僕と同じように声ひとつ出さずに食べていたカラ松とチョロ松兄さんがおそ松兄さんの方を向いた。
「うん。僕も和解したよ」
「え、なんで?!なにお前らお兄ちゃんよりも先に仲直りしてんの?!お兄ちゃん悔しい!」
おそ松兄さん、俺もすごく悔しい。
それを言ったら茶化されそうだから、言わないけれど。
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紫垣(プロフ) - 続きが待ち遠しい!!……もっと見つけるのが早かったらまだ更新続いてたのかな( ; ; ) (4月18日 5時) (レス) @page21 id: f62f374630 (このIDを非表示/違反報告)
燎_*(プロフ) - 更新停止……だと!?!?!?誰か、!!この作者を呼び戻してこい!!! (1月17日 3時) (レス) @page21 id: 4b8e8fd2cd (このIDを非表示/違反報告)
低浮上な塩なんだなあ(プロフ) - つ、続きは…続きは何処ですか…!?!?(血涙)更新をずっと楽しみに待っております…… (10月30日 2時) (レス) @page21 id: 6cf2860157 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ - この作品が大好きです。更新待ってます! (6月4日 22時) (レス) @page21 id: 395eb4f5e7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらっち(プロフ) - 何年でも更新を待ちます。 (2022年5月15日 0時) (レス) @page21 id: ab3ad11547 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2016年1月17日 17時