57.「騙されて」 ページ18
「御馳走様でした。」
1人きりの部屋に閉じこもり、食事を終えた。
あの日からずっと行ってきた、もはや当たり前の感覚。
それはきっと元から当たり前だったわけではなくて、私や私の家族が当たり前のことだと みんなの脳裏に焼き付けていったのだろう。
それを止めようとした者は、今更どこにも居るはずがなかった。
「……あら、A。どうしたの?ほうれん草残ってるじゃない」
台所へ食器をもっていくと、既におそ松たちが食べ終えていたのか8枚の食器を速く丁寧に洗ってゆくお母さんがいて、お浸しを見つめながらそう聞かれた。
「……ちょっとね。……散歩してくるね。」
水桶に食器を沈めて玄関へ急ぎ、適当な靴を履いて外へ出ると、外で十四松が一松をバットに括りつけて素振りをしているところが見えた。
「……あ!A、お出かけっすか?!」
がくがくと震える頭から目を逸らせずにいたが、十四松から話しかけられたために思わず目線を外した。
黒目が見えていないが、あれは大丈夫なものなのか。
常識では考えられない行為が平然と行われ、それが当たり前となっていくこの世が恨めしい。
「……そんなとこ。」
ダメだ、そんなことを考えてしまったら気分を害してしまう。
そう思い、気分転換がてらに目的地まで走っていった。
向かう場所は、私の英雄がいるところ。
「……デカパン博士、」
音を立てないように施設へ入り、小さく「英雄」の名を呼んだ。
すればゆっくりとこちらへ向かってくる影があって、優しく挨拶をしてくれた。
「こんにちはダス。……、あまりいい雰囲気じゃないダスね?」
「……こんにちは、博士。……相談、あるんですが。」
この世界は、酷く歪んでいる。
私の存在を認めようとはせず、また消し去ってしまおうとしてさらに歪んでくる。
それが、わたしは大嫌いで仕方がなかった。
「透明人間になれる薬、ダスか?」
「うん。透明人間というか、なんというか。とりあえずまあ、存在が綺麗に消えれるくすり。」
私がそう言い切ると、曖昧に唸った後に博士が棚から一つの小瓶を持ってきた。
うすい赤色をした液体が入っている。それを私の手元に置いて、言葉を続けた。
「4ml飲めば、1時間姿を消せるダス。1mlで15分。……飲みすぎは、よくないダス。」
「……、ありがとう、博士!これ飲んで、おそ松たちにギャフンと言わせる!」
これで、この世とおさらばできるならば。
3805人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫垣(プロフ) - 続きが待ち遠しい!!……もっと見つけるのが早かったらまだ更新続いてたのかな( ; ; ) (4月18日 5時) (レス) @page21 id: f62f374630 (このIDを非表示/違反報告)
燎_*(プロフ) - 更新停止……だと!?!?!?誰か、!!この作者を呼び戻してこい!!! (1月17日 3時) (レス) @page21 id: 4b8e8fd2cd (このIDを非表示/違反報告)
低浮上な塩なんだなあ(プロフ) - つ、続きは…続きは何処ですか…!?!?(血涙)更新をずっと楽しみに待っております…… (10月30日 2時) (レス) @page21 id: 6cf2860157 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ - この作品が大好きです。更新待ってます! (6月4日 22時) (レス) @page21 id: 395eb4f5e7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらっち(プロフ) - 何年でも更新を待ちます。 (2022年5月15日 0時) (レス) @page21 id: ab3ad11547 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2016年1月17日 17時