【おそ松さん】よろしくおあがり、要らない子。2巻

51.「ちゃんとやっておくんですよ」 ページ11

紙の上に、一滴の涙がこぼれた。



涙はひろがり、少しずつ筆字を侵していき、字は少しずつ踊っていくように見えた。



紙の上の字が踊っている間にも、私の手に、足に、床に、一つずつ零れていく。





少しずつ、少しずつ紙をつかむ手が刻むように震え、視界がぼやけていく。



これは、なんだろう。



なぜ、なぜ私の瞳から涙が零れていくのだろう。


どんなにチョロ松から嫌がらせをされたって、六つ子たちから存在を無いもののように扱われたって、私のこの双眼から涙が出てくることなど一度もなかった。



なのに何故、字を読んだだけで泣いてしまうのか。



「……、ぅく、っ…」



酷く久しぶりに泣いた気がする。



思わず嗚咽が漏れそうになって、口を抑えてしゃがみこむ。




十四松には、負かされてばっかりだ。




「………、ありがとう、十四松。」



十四松は優しいから、それだけでいいんだ。


無理にみんなを止めようとしなくても、ひとりで背負おうとしなくてもいいんだ。



気負うことをしなくてもいいし、私に変な気を遣う必要だってない。




だって、貴方の本来もつ大きな優しさが、こうして接することでしっかりと伝わってくるから。




私のことを大事に思ってくれる、その優しさが。

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