60.「剛腕エモーション」 ページ21
「いた!A〜っ!!」
熱狂的な声と足音が近づいてくる。
これがもし赤の他人によるものであれば、すぐさま発狂しながら泡を吹くものであろう。
しかし今ばかしはそれすらも愛おしくて、ぎゅっと抱きしめてしまいたくなるくらい。
そうしてそのすぐ後ろに、若葉色の兄弟が見えた。
ああ、昔は誰よりも速くて、スポーツが大得意だったよなあ。
「……、ふたりとも……」
咄嗟に小瓶をポケットの中に隠して、そちらへと声をかけた。
すればどうだろうか、彼らはまるで気が狂いきったかのような、それでいて安堵しきったような、なんともいえない複雑な表情を見せたまま私の横を勢い余って通り過ぎ、これまた有り余った勢いでこちらへ戻ってきた。
「A!心配したんだよ?!今までどこに…!!!」
ずっと、みんなのところに居たんだよ。
そう言ってやりたかったが、流石に口には出せなかった。
勝手にひとりで居なくなったのだから、それなりの代償も、責任もあるのだ。
「……、近くて、遠いところかな。手を伸ばせば届くけれど、億劫で伸ばせないから届かない、そんな場所。」
それがどこなのかは、私にもわかりはしなかった。
だけれど、それがチョロ松にも十四松にもわかりやしないところであることだけは、何故だかよくわかっていた。
そうして、わたしがいま何が言いたがっているのか、ということを私自身だけにはよく伝わってきていた。
「なにそれ?!競馬の賞金かなぁ?!?!」
素っ頓狂な声を上げて、十四松は当てずっぽうに答えを出した。
「……それくらい軽くて簡単なものなら、良かったのにな」
「え?何か言った?A……」
「………ううん、なんにも。ただね、そこにはいつでも行けちゃうんだよ。……、みんなは絶対行きたいって思わないだろうけど。」
そう言い捨てて「明日お金持ってくるから」とチビ太に伝えて、さっさと帰路へとつく。
すれば追いついてきた十四松たちに片手づつ引っ張られ、無理やり手をつなぐ形になった。
「……?」
「Aが、どこか行っちゃわないよーに!」
「いつでも行けちゃうなら、尚更だしね」
「……生憎、今は行きたい気分じゃないんだよなあ。」
久しぶりに、嬉しいと感じられたのかもしれなかった。
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紫垣(プロフ) - 続きが待ち遠しい!!……もっと見つけるのが早かったらまだ更新続いてたのかな( ; ; ) (4月18日 5時) (レス) @page21 id: f62f374630 (このIDを非表示/違反報告)
燎_*(プロフ) - 更新停止……だと!?!?!?誰か、!!この作者を呼び戻してこい!!! (1月17日 3時) (レス) @page21 id: 4b8e8fd2cd (このIDを非表示/違反報告)
低浮上な塩なんだなあ(プロフ) - つ、続きは…続きは何処ですか…!?!?(血涙)更新をずっと楽しみに待っております…… (10月30日 2時) (レス) @page21 id: 6cf2860157 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ - この作品が大好きです。更新待ってます! (6月4日 22時) (レス) @page21 id: 395eb4f5e7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらっち(プロフ) - 何年でも更新を待ちます。 (2022年5月15日 0時) (レス) @page21 id: ab3ad11547 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2016年1月17日 17時