俺が恋をしたのは片足がない人だった。【高尾和成】

むっつの障害 ページ7

俺の横には未銅さんと、車いすを押すお兄さん。
返却の場所に来ると、

「まず、自分のカードを出して、それからハンコを押してもらってください。そして本を出して、バーコードを読み取ってもらえば返したことになります。その本は図書館側が元あった場所に返してくれるので、そのまま渡しちゃってください。」

と説明を受けた。
実際にやってみますね、と彼女は俺の前に来て、やり方を見せてくれた。
俺もそれに続いてやってみると、意外と簡単だった。
そこにいたおばさんが、『イケメンだからおまけしてあげるわ。』と言ってハンコの代わりに猫のシールを貼っってくれた。
後から、『みんな一番最初はそうだ。』とお兄さんに言われたけど。

「他におすすめの本ってあるんすか？」

借りる本がない俺は、この間『おすすめの本も紹介します。』と言われたことを思い出して聞いてみた。
すると彼女とお兄さんはは本棚の方に行き、

「これなんか、とっても面白かったです。男の人が読んでも面白いと思いますよ。」

と一冊の本を持ってきてくれた。
『バスケットボール部、恋をする』とでかでかと書かれた表紙には、バスケットボールを挟んで男女が立っているシルエットが書かれていて、題名には似合わないおしゃれなデザインだ。

「バスケ部だって聞いたので。けっこうバスケの用語も出てきてて、私もバスケ見てみたいなーって思いました。」

俺は早速その本を借り、自分のカードにはシールとハンコが押された。
読んでいる間、俺はどうやら相当なウキウキ顔をしていたらしく、

「高尾くんは相当バスケがすきなんですね。」

と少し笑われた。
お兄さんも横を向いて声を殺して笑っている。
俺、そんなに間抜けな顔してたか？

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