桜の葉が散った後に。【笠松幸男】

cherry tree ９２ ページ3

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家に帰ると、どうやら涼太はお風呂に入っているようだった。


私は今日は委員会があって帰りが遅くなると言っていたけど
思ったよりも早く終わった。


ふぅ、と息を吐きながらソファにカバンを置くと

テーブルの上に涼太のスマホが投げ出されていた。



「……え？」



涼太のスマホには、メール画面が表示されていて
お母さんという文字が見えた。


その文字が、何故か無性に気になって
悪いとは思いつつも、涼太のスマホを覗く。


"お母さん、入院が長引くそうです。

寂しがってるから、電話とかかけてあげて"


それは受信したメールらしくて
from(フロム)の所には水谷、とあった。


水谷さんは、お母さんの転勤先の、外国の会社に勤めてる日本人の女の人。


外国だと、一人での勤務は辛いだろうからということで
お母さんと一緒に働いているらしい。

それは聞いてたけど……




長引くってことは



もしかして、前から入院してたってこと？





そもそも、私は水谷さんのメールアドレスも知らないし……



そう考えを巡らせているとき、お風呂の方でドアを開ける音がして
慌ててスマホをテーブルに置いた。


「あ、ねぇちゃん帰ってたんだ」

「うん」


「おかえり」



「ちょっと今から友達に電話してくる」



涼太はそう言って、自分の部屋に入って行った。




たぶん涼太は、私に気を使って隠してたんだよね。


お母さんが入院してたってことを。







むしろ、私が涼太に迷惑をかけてばっかじゃん。




ほんと、情けない

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