43話「昔話」 ページ43
暫くお世話になる私は、空いている部屋を使わせてもらうことになった。
普段は使っていない様で、少し埃が溜まっていたので軽く掃除を済ませ、部屋を出るといい匂いがした。夕食の準備してるのかな。
ひょこっと炊事場を覗くと、錆兎がいた。割烹着を着ている。ちょっと可愛いな。かなりレアだ。
「手伝うよ」とそう声をかけると嬉しそうに笑ってくれた。
「部屋の掃除はどうだ?あの部屋でよかったか?」
「もちろん。使ってないって言ってた割には埃が少し溜まってたくらいだよ。日頃からちゃんと掃除が行き届いてる証拠だね」
「そりゃどうも。なにか必要な物があれば言えよ」
「ありがと。でも雨風凌げる屋根と布団があれば私はどこでも寝られるから平気だよ」
「相変わらず猿みたいなやつだな」
「うわぁ、錆兎くんひどい」
こうして話していると、凄く懐かしい感じがする。実際話したのだって最終選抜のあの時だけだったけど、共に生き残ったあの7日間は、数年経った今でもそれだけ色濃く残ってるってことかな。
「そういや義勇は?」
「近くの山走りに行ってるよ。もうすぐ帰ってくるはずだ」
「頑張るねぇ…私も見習わないと」
「…………Aは、正直どう思った?義勇が柱になったって聞いた時」
「どうって…妥当だと思ったよ。義勇か錆兎、それか2人揃って柱になるとは前々から思ってたし」
「……お館様から呼び出されて、最初は俺ら2人共に志願するならそれでもいいって言ってくださったんだ。過去に同じ呼吸の使い手が2人柱だったこともあったらしい。俺らには、柱になれるだけの技量も力もあるから、って」
「けど、断ったと」
「ああ。…もちろん強さを認められて嬉しかった。柱は誰でもなれるわけじゃない。剣士の最強クラス。憧れてない訳じゃない。けど、俺はあの日…最終選抜の最後の日。Aがあそこで助けに入ってくれなかったら、間違いなく死んでいた」
ずっと気にしてたんだ。あの日のこと。私もよく覚えてるように、錆兎の中にも色濃く残ってるんだ。
「1度死んだようなもんなんだ。そんな俺が柱なんて名乗れない。けど義勇は違う。あいつは柱になれる器を持ってる。だから決めたんだ。隣で支えようって」
なかなか納得してくれなくて、今でも義勇はなんで自分がって思ってるみたいだけどな。と困ったように笑う錆兎。
「錆兎が自分で選んだのなら私は何も言わないし応援する。けど、私は錆兎だったから助けたんだよ」
44話「生きていて欲しい」→←42話「地雷を踏み抜いていくスタイル」
124人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鎖夏(プロフ) - 楽しく拝見させて頂いてます。私、錆兎が大大大好きなので、この作品まじ最高すぎます!!夢主ちゃんの性格もよき笑応援してます!! (2020年6月22日 18時) (レス) id: a8669a7d2d (このIDを非表示/違反報告)
花札 - そういえば、ひなたさんの推しは誰ですか?それと、有一朗君が死んでしまった所とっても泣きました。カナエさんはどうなるんでしょうかね。頑張ってください!! (2020年6月5日 15時) (レス) id: bb31b5d897 (このIDを非表示/違反報告)
いくら - ひなたさん» いえいえ!!こんな素敵な小説なら、いつまでも待てますよ!! (2020年5月19日 12時) (レス) id: 16c4d9d785 (このIDを非表示/違反報告)
花札 - こんにちは、とても面白かったです。(はやく続き読みたい・・・。)更新、頑張ってください!応援してます!! (2020年5月9日 21時) (レス) id: bb31b5d897 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - いくらさん» くそみたいに更新遅くて申し訳ないです…!頑張りますね!!!! (2020年5月9日 11時) (レス) id: 138242db57 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひなた | 作成日時:2020年3月17日 12時