second 死神の手 †マギ†

死神は冷たい檻の中。 ページ2

「おはようございます。A」

「やっと目が覚めたか」


　しばらくしてシンとジャーファルが来た。

「……」
　ちら、と目配せだけして、あとは無視する。

「……なぁ。死にたいか？」


　……。
　……『なぁ、死にたいか』？

　死にたいか……って。


「ああ、死んでやりたいよ」


　振り絞った声。
　かなり渇いた声だったけど。
　


　確かに言ったその言葉。


「そうか……」

「……」

　ジャーファルは隣でワナワナ震えている。

　好きだ。
　好き。


　すき。



　ジャーファル、好き。

　大好きなのに。


　

　

　僕は冷たい檻の中。
　彼は暖かい日だまりの中。

　好きで、こんなに近くにいる。


　

　けど。

　届かない。



　きっと……いや、絶対に。


　手を伸ばしても届かないだろう。


　だからだ。
　生きている意味はない。

　死んでやりたいよ。


　
「A……」


　


　

　ジャーファルは僕の名を呼んで、すぐにうつむいた。



　


　


　


　


　嗚呼。

　普通に。出会いたかったなぁ。



　あなたと。あなたたちと。





　


　



　

　二人には無言で鈴を鳴らした。
　頭にまたビジョンが映し出される。



　

　夜。
　ここから脱走して、国を走る僕。
　後ろに迫る兵士。

　そいつらをまくために、暗い路地に入る。

　逃げ切った僕は、後ろの人影に気づかない。
　振り返ったときには、月も雲に隠れてそいつは見えない。



　

『＿＿＿＿＿＿捕まえ、た』
　

　そういって人影は僕の心臓に刃物を突き刺す。
　ぐさり、血が出る。



　

『どうして……』

　僕が悲鳴のような声をあげる。
　最後まで言い切る前に、そいつは止めを刺した。
　



　動かなくなった僕。

　

『……どうしてだろうか……』


　そいつの声だけが、虚しく響いた。

＊


「！」


　……なんていとおしい……声。
　でも誰の声かわからない。



　気づけば、シンたちはいなかった。


　そうなのだ。

　ビジョンを見ている間、僕には周りの人の声は聞こえない。
　だから彼らは、何を言っても返事をしない僕に愛想ついて(まぁ最初から愛想なんかないだろうけど)出ていったのだろう。



　


　

　……まぁ、ちょうどよかった。


　これが逃げるチャンスってことか。




　



　



　ああ、今日はなんだか……死神(デス)が味方してくれているみたいだ。

　

　

　

　この僕……死神の手(デスゴット ハンド)に。
　

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