野原の松の林の陰の小さな萱ぶきの小屋。 ページ14
「急がないとな…。」
「乱歩さんの話だとあの突き当たりの部屋でしたよね! 」
無線を聞いていた国木田は敦達と谷崎達が敵に遭遇したことを聞き、走る速度を速める。
そして乱歩の超推理で割り出した場所に到着するとそこは見張りもなく、ただ鍵が書けられているようなただの一室だった。もしかすると上の騒動で抜けているのかとも思ったが、あまりのことに拍子抜けする。
「国木田さん。
誰も居ないですけど普通に開けちゃって大丈夫ですか? 」
「あぁ、だが用心するんだぞ。」
「はい!! 」
元気よく賢治が返事をすると扉に手を掛ける。そしてよいしょと力無い掛け声と共に扉、否壁ごと大破させた。
まだ幼い子供ともいえる賢治だが、こういった無茶苦茶なところを見ると切実に恐ろしいと思う。
良い教育といえば語弊があるのかもしれないが、この様な温厚な正確に育って本当に良かったと思う。ここまで約0.1秒。
国木田は「開きました! 」という賢治の声と笑顔に咳払いを一つして気持ちを切り替える。
そして予め異能で出しておいた鉄線銃を構え、突入した。
其処には長机に長椅子が設置されているだけの質素ながらも清潔な部屋だった。そしてその中にこれまた質素ながらも清潔な服を纏った若い男女が閉じ込められていた。
あたりを見渡すも、敵と思わしき人影もない。国木田はホッと胸をなで下ろす。
「俺達は武装探偵社だ。助けに来た。」
国木田は皆に聞こえるように声を張り上げる。だが、誰一人その言葉に動くことはせず、ただ黙って戸惑ったように国木田を見つめていた。
その様子に賢治が首を捻る。
「どうしたんですか? 助けに来ましたよ。
僕達が援護するので避難しましょう! 」
「……私達は行けません。」
賢治の言葉に、重い口を開くように一人の女が云った。その言葉が理解出来ずに国木田は少し戸惑いながらも冷静さを装う。
「一体どういうことだ。
お前達は谷川にオークションとして売り出されるんだぞ? 」
国木田の言葉に皆互いに顔を見合わせる。女が俯きため息をついてから、そっと顔を上げた曖昧に笑う。女の表情は儚く、触れたら壊れそうなのに力強く美しい。
国木田はこの表情に見覚えがあった。
生に懈怠し、運命に振り回され乍らも生きる。A、お前の笑顔に似ているんだ。
国木田の中で何かがそっと息づいた。
「私達が行けないのには、理由があります。
それはーー、」
その衝撃の事実を聞き、国木田達はハッと息を飲んだ。
何事も為さぬにはあまりに長い。→←物と物の間に出来る影にこそ美はある、
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みるく(プロフ) - この小説はすごく美しく綺麗だなと思って、とても気に入っています!!!儚く美しい世界観というかなんというのか、語彙力がないですが、ものすごくいい作品でした!読ませていただきなんども涙を流しました!素晴らしい小説を作って下さりありがとうございますm(*_ _)m (2022年3月13日 9時) (レス) @page45 id: a995b7f6e9 (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - 焔蘭さん» コメントありがとうございます。タイトルは夢主が文ストの世界に来た時、ビルから飛び降り落ちたので《空から落ちた》と入れて、幸せとは遠い子が人との繋がりで幸せになっていくので《薄倖美人》としています!後は夢主の異能が《空が分裂する》だというのもあります! (2019年1月13日 19時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
焔蘭 - 初めましてで失礼します!タイトルの意味って何かあるんですか?そしてこれからも頑張ってください! (2019年1月13日 16時) (レス) id: 98975d3783 (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - 乱歩ルート期待の敦くんの妹さん» コメントありがとうございます!乱歩さん…。乱歩の夢希望ですか? 良かったら書きますので聞きますよ! (2018年5月29日 12時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
乱歩ルート期待の敦くんの妹 - 乱歩さん乱歩さん乱歩さん(ぶつぶつ (2018年5月29日 0時) (レス) id: 4a14a6da47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海姫 | 作成日時:2017年8月6日 0時