【黒バス】深海で見つけた夕空。【逆ハー】

《忘れかけた記憶》 ページ5

「おーい！こっちこっち！」

「おせーよ、なにしてたんだ？」

「ごめんごめん。」


昔の夢を見ていた。自分を囲む友人に笑いかける。暖かくて優しくて、何故か涙の出そうになる記憶。そんな昔の夢を見ていた。


「今日のお前のラッキーアイテムはチョコレートなのだよ。受け取れ。」

「あ、ずるい。俺にもちょーだい。」

「お前のラッキーアイテムはチョコレートじゃない！」


この記憶を幸せ以外になんと呼ぶ。だけど、胸が抉られるように痛くて辛いのはどうしてだろうか。もう、戻ることができないだからだろうか。


「怪我をしているぞ。手を出せ。 」

「ありがとう。」


顔を覆い、しゃがみ込む。胸が痛いから、もう見たくないの。もうやめて。
何度も何度もそう胸の中で繰り返した。






　






　




　
ピピピピピピ…、


目覚ましの音でゆっくりと意識が浮上する。寝惚けた頭を起こして瞼をこじ開けると、まだ外は暗くて寒い。時計を見ると起床時間ピッタリだった。午前中は仕事がある。


ピピピピピピ…、


まだ、ぼんやりとする頭を動かして目覚ましを止める。眠くて仕方ないが起きなくてはならない。彼女は暖房を付けて布団に潜った。


「…はぁ、」


そして胸のわだかまりにため息をつく。夢を見ていた気がする。暖かくて悲しい夢を。
切ない気持ちに区切りをつけるように、彼女は布団から出た。

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