短髮と白銀。 ページ14
Aside
私は、眠い目を擦って「出勤」した。
眠いのも当然だ。私は昨日、午前3時程迄先輩方の飲みに付き合い(とは云っても全員日付が変わる前に寝ていたが)、最終的に彼等を拠点迄送り届けて帰ったのだから。
欠伸をしながらマフィアビルに入った私は、先ず芥川さんに御挨拶した方が善いかと、彼の執務室に向かった。
閉められた扉から、少し話し声が漏れ聞こえる。樋口さん辺りが中にいるのだろうか?
控えめにノックを2回し、『御早う御座います、芥川さん。Aです、お入りして大丈夫ですか?』と丁寧に声を掛ける。
すると、暫く沈黙が響き渡り、其の後で「・・・入れ」と低い声がした。
其の声に応じ扉を開けると、硬い表情の芥川さんと樋口さんが、私の姿を見て目を見開いた。
「・・・A、貴様、髪が」
芥川さんが恐る恐る私に声を掛け、私は大分涼しくなった首もとに手を当てた。
そう、私は家に帰ってから、背中迄あった白髪を肩上迄切り、毛先を黒く染めたのだ。
一種の、覚悟の証明の為に。
実際、数年伸ばした髪を切るのには、結構な勇気を要した。鋏を髪に入れた途端、“彼”の言葉が蘇ったから。
____Aさんの髪は綺麗だね。伸ばした方がきっと似合うよ。
嘗ての仲間だった彼____アキラにそう云われてから、私はずっと髪を伸ばしてきた。
鋏を持った手が震えたのに気付いてから、莫迦な私は漸く其の事実の重さを知ったのだけど。
でも私は、今更後退するには遅すぎた。アキラの言葉を消す様に、私は長い髪を断ち切った。
其の後、半ば自棄の様に毛先を黒く染めたけど、本当は真っ黒にする事も出来た髪に白い部分を残したのには意味がある。
____貴様の銀髪は、夜景に映える。
居場所を作って呉れた彼が、そう云ったから。
『・・・変ですかね?』
毛先に手を触れながら問い掛けると、芥川さんより先に樋口さんが口を開いた。
「A、短髮も似合いますね!素敵だと思います!」
パッと顔を耀かせた樋口さんに、安堵して表情が綻ぶ。
お礼を云おうと口を開くと、芥川さんが仏頂面で遮る様に云った。
「・・・其方の方が似合う」
お世辞だとは思わなかった。彼の耳が、少し紅くなっていたのが見えたから。
だから私は、昨夜聞かれ損ねたお礼の分も含めて、微笑する。
『____有難う、御座います』
27人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
世河経(プロフ) - 文ストもアクタージュも大好きです!クロスオーバーしたかったんですが、「どうする……?」と思考停止状態で、「ふおおおそう来たか!」って驚愕しました!!!こんなに面白いのに何で星が赤くない……?(煩くてすみません。あと連コメごめんなさい) (2021年8月3日 12時) (レス) id: 58edaa5afd (このIDを非表示/違反報告)
世河経(プロフ) - 天香さん多分文スト滅茶苦茶読み込んでいらっしゃいますよね?!要所要所に小説で見たような表現が……。すごいです!何課、本当に。、私が目指してるやつで。。。尊敬してます!! (2021年8月3日 12時) (レス) id: 58edaa5afd (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - ちづさん» は、発狂ですか!?御馳走様です!(錯乱)アクタージュと文ストのクロスオーバー全然無いですよね・・・僕もまだまだ未熟なので、お見苦しい点は多々あると思いますが、貴重なクロスオーバー作家(オイ)として頑張ります(笑) コメントありがとうございます! (2020年4月17日 22時) (レス) id: 63e3e21700 (このIDを非表示/違反報告)
ちづ - アクタージュも文ストもめちゃくちゃ好きで好きで!!!!!!この作品を見つけた時発狂しちゃいました笑応援してます!! (2020年4月17日 10時) (レス) id: d5e82ff792 (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - 蟹江さん» え・・・(歓喜の余り思考停止)こんな所まで来て下さるとは・・・!貴方のお言葉で完結まで突っ走る気力が湧いて来ました!!アクタージュはガチで神作なので是非ご一読をお勧めします!!貴方の為に更新頑張ります!!! (2020年4月16日 11時) (レス) id: 63e3e21700 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/
作成日時:2020年3月12日 13時